女神湖の氷雪コースで日産の最新ラインアップをテスト
長野県の女神湖上に作られた特設コースにおいて、「日産ノート」シリーズの「e-POWER 4WD」を中心に試乗してきた。そもそもノートはエンジンで発電した電力をもとに、100%モーター駆動で走るクルマ。トルク制御は1/10000秒単位で行われているというから、氷上のような滑りやすい路面であったとしても耐えられるということなのだろう。
日産いわく、旧型モデルでも4WDモデルは存在していたが、リヤのモーター出力はかなり小さく、発進や登板路、氷結や深雪には対応できていたものの、追い越しやカーブといった状況ではその良さが出し切れなかったという。旧型に対して14倍の出力となる50kW、トルク100N・mを達成したリヤモーターを持つ新型ノートは全車速帯で対応でき、ライントレース性能が飛躍的に向上したというから期待は高まる。
電動モーターのポテンシャルを活かす精密なトルク制御
e-POWER 4WDの見どころはリヤモーターの出力アップだけではない。駆動力設定に対してのセッティングもポイントだ。加減速や旋回によって4輪各々が受け持つことが可能なキャパシティはつねに変化している。タイヤの摩擦円がつねに大きくなったり小さくなったりすることを繰り返しているが、それに対して適切な駆動力を与えようということ。
そんなの当然のことでしょ、と思うかもしれないが、その考えをドライ路面と低μ路とで使い分けを行い、安定した走りを展開しようとしているのだから恐れ入る。ドライではスタート時から前後の荷重移動に合わせてリヤへ積極的に駆動力を与えている。
具体的には0.33Gまでリヤの駆動力を増やし、その後はフロントに移行。ワインディングではタイヤの限界まで考慮した前後駆動力設定を考えているとのこと。タイヤのグリップ限界をつねに見据え、そこをフルに引き出そうというわけだ。それをキメ細やかなトルク制御が可能なモーターで行っているのが見どころのひとつだろう。
減速時には回生ブレーキが有利に働く
だが一般的に、低μ路になるとタイヤの摩擦円は極端に小さくなり、グリップ限界を飛び越しやすい。そこでe-POWERは低μ路判定をモーターによって行い、リヤの出力をダウンする制御を瞬間的に行っている。従来のモデルであればスタビリティコントロールの「VDC(ビークルダイナミクスコントロール)」がスリップを検知し、出力をダウンさせるなどの処置をしていたが、それではタイヤが滑ってから制御されているわけで、挙動の乱れが出てしまう。その前にモーターによって低μ路判定が可能なところが特長のひとつといっていい。
一方で減速側に対してもe-POWER 4WDはメリットを持っている。それはアクセルオフ時にリヤでも回生ブレーキを作動させることが可能になる点だ。氷結路において時速40km/hからのアクセルオフ減速では、旧型に対して40%もの制動距離短縮を実現。新型の2WDに対しても20%ほど減速が早いようだ。ちなみにアクセルオフ時に出せる4WDの最大Gは0.20。2WDモデルは0.18という設定がそもそもあるのだが、氷結路では制動距離にここまで違いが出るのかと驚くばかりである。
ノートe-POWER 4WDが見せた驚くほどのコントロール性
さて、そんな「ノート」の4WDはどんな走りを展開するのか? まずはベースモデルの4WDモデルから試乗する。スタート地点からやや乱暴にアクセルを開けてみたが、横方向に対してのブレがなく、修正操舵を必要とせずにスルスルと発進してみせた。氷上とはいえ路面がボコボコとしており、決して平坦ではない女神湖。路面の各部には雪が乗っており、じつはその部分でグリップし、一般的なクルマでは修正操舵がどこかで必要になってくるもの。だが、本当に綺麗に発進してくれるのだ。
私がドライブした試乗車は唯一ブリヂストンのブリザックVRX2を装着。ほかのノートは新作のVRX3であった。つまり、横方向に対してはVRX3に対して不利なタイヤなのだが、それでも乱れが少ないのはすごい。一方、減速側はアクセルオフだけでも4輪で安定して止まれる感覚がある。フットブレーキに触ると即座にABSが働き進路を乱されるのだが、e-pedalに頼って走るとライントレース性能はかなり高い。
そのあとにクロスオーバーやオーラにも乗ったが、基本的な特性は変わらず。クロスオーバーは背が高く振り子のように動くところがあり、それを引き締めた足でカバーする造りだが、4WDを手に入れたことで安定した走りを可能としていた。オーラは3ナンバーサイズのボディに合わせてタイヤ幅を185から205へと引き上げたことでさらなる安定感があり、じつにコントロール性に優れた走りを展開していた。これはなかなか面白い。