ダイナミックなスタイリングが印象的なテスタロッサ
打倒フェラーリを掲げて設立されたアウトモービリ・ランボルギーニが、1966年にリリースしたランボルギーニ・ミウラで宣戦布告、後継のカウンタックで本格展開となったスーパーカー。これに応える格好でフェラーリも1968年にV12を搭載した365GTB/4で応戦し、1973年にリリースした365GT4/BBで王座を奪還することになりました。
そんなフェラーリが365GT4/BB/BB512の後継として、1984年に投入したモデルがテスタロッサです。今回は、地を這うような車高とスタイリングでファンを魅了したフェラーリ・テスタロッサを振り返ります。
戦後に大活躍したスポーツカーの名跡を継いだスーパーカー
古くからのファンならばテスタロッサと聞くと、1950年代にフェラーリが世界スポーツカー選手権に投入した、レーシングスポーツカーを思い浮かべる向きも少なくないでしょう。最初にテスタロッサを名乗ったのは1956年の世界スポーツカー選手権に登場した、フェラーリ・モンツァの500TRでした。
さらに1957年には発展モデルの500TRCが登場しています。これらはアウレリオ・ランプレディが設計したV12エンジン、通称“ランプレディ・エンジン”から派生した2L直4エンジンを搭載。ですが、1957年に登場した250テスタロッサは、ジョアッキーノ・コロンボが設計した、通称“コロンボ・エンジン”のティーポ128(3L V12)エンジンを搭載していました。
赤ヘッドを意味するテスタロッサ
ちなみにテスタロッサ(Testa Rossa)とはイタリア語で「赤い(Rossa)頭(Testa)」を意味していて、エンジンのヘッド(正確にはカムカバー)が赤く塗られていました。スポーツカーレースで活躍した名称を復活させのが、1984年に登場したスーパーカーのジャンルに分類されるフェラーリ・テスタロッサでした。
スーパーカー界における雌雄を決し、王座を奪還したフェラーリ365GT4/BBと、その発展モデルであるBB512iの後継として1984年に登場したフェラーリ・テスタロッサ。12気筒エンジンをミッドシップに搭載する2シーターという基本パッケージは共通していましたが、“キモ”となるエンジンが気筒辺り2バルブ(=24バルブ)から気筒辺り4バルブ(=48バルブ)にブラッシュアップされていたのが大きな変更点。最高出力もBB512iの340psから390ps(EC仕様)へと、50psもパワーアップしていました。
一方、シャシーに関しては、ホイールベースが2500mmから2550mmへと50mmだけ延長されていて、トレッドもBB512iの1500mm/1570mmから1520mm/1660mmにまで拡幅。とくにリヤはBB512iのに比べて、90mmも幅広くなっていました。
タイヤも225/50VR16&255/50VR16へとサイズアップされていましたが、前後ともにダブルウィッシュボーン式サスペンションは踏襲されており、リヤが2本のコイルスプリングで吊られていることも変わっていませんでした。またブレーキも前後ともにサーボ付きのベンチレーテッドディスクが奢られていたのもBB512iと共通です。
BB512iからテスタロッサへの移行で、もっとも大きく変わっていたのはそのスタイリングでした。これにはラジエターをフロントからキャビン直後のボディ両サイドに移したことが影響しているのですが、そのラジエターへのクーリングエアを導くエアダクトが設けられているのです。
しかもエアダクトはリヤのオーバーフェンダーと一体になっていて、デザイン上の効果だけでなく、クーリングエアを整流するために5枚のフィンが生やされていました。このエアダクトからホイールアーチにかけてのデザインが、ライバルとは大きく一線を画したものでした。
その辺りの視覚効果なのか、あるいは全長と全幅が85mm、146mmサイズアップしていることの影響なのか? 実際にはBB512iに比べてテスタロッサは全高が10mm高くなっているのにもかかわらず、地を這うようなデザインで、数値以上に低く映ったことを記憶しています。本当に驚かされました!