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超高額車が異例の大ヒット! 世界が惚れたフェラーリ・テスタロッサという芸術

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田 了

テスタロッサから512TR・F512Mと12気筒ミッドシップを継承

 スーパーカーのトップ2対決が華やかだった84年に登場したテスタロッサは、毎年のように細かな年次改変を繰り返しながら熟成を続けていきました。1986年にリリースされた“中期”モデルでは、公称出力などのデータは変わっていませんが、燃料噴射システムがボッシュのKジェトロニックからKEジェトロニックに変更されています。

 また1988年にはジオメトリーが変更されるなどサスペンションに手が加えられ、ホイールもセンターロック式から5穴式の一般的なスタイルに変更されていました。またこれは市販モデルということにはなりませんが、1986年には、当時フィアットの会長としてフェラーリとも縁の深かった(フィアットのフェラーリ統合は2年先の1988年)ジァンニ・アニエッリの会長就任20周年を記念してワンオフでテスタロッサ・スパイダーが製作されていたことが記録されています。フェラーリテスタロッサ

 交通事故で足が不自由になった彼のために、オートマチック機能も備えたヴァレオマチック付きだったようですが、あらためて真のセレブリティであったジァンニ・アニエッリの偉大さと、そんな彼に対するフェラーリの、全社を挙げての心遣いが感じられるエピソードです。

 8年間のモデルライフを終え7177台と、スーパーカーとしては異例な大ヒットを記録したテスタロッサは1992年、後継の512TRへと移行していきました。外観ではフロントのグリル周りに手が入り、全幅いっぱいに広がりを見せていたグリルの中に組み込まれていた、スモール/ウインカーとドライビングランプはグリルから独立。その分、グリルは“おちょぼ口”となりました。フェラーリ512TR

 最大の変化はエンジンで、4943ccの48バルブで180度V12はそのままに、最高出力が428psにまでパワーアップ。テスタロッサで一時期は280km/h台まで抑えられていた最高速度(カタログ値)も、313.8km/h(毎時195マイル)まで引き上げられていました。

 シリーズの最後を飾ったのは1994年のパリ・サロンでお披露目されたF512M。その名の通り512TRの進化形(Modificata。イタリア語で変更)を示すMが末尾に加えられています。4943ccの48バルブで180度V12は、さらにパワーアップが図られ440psを絞り出していました。フェラーリ512M

 外観では、それまでリトラクタブル式だったヘッドライトを固定式として透明樹脂のカバーで覆い、補助ランプもスモール/ウインカーとドライビングランプが分離独立していました。またフロントグリルもさらに薄くなり、フロントビューのルックスは大きくイメージが変わっていました。リヤビューもテスタロッサ(初代モデルから)の特徴だったルーバー越しの角型テールライトが、フェラーリのほかのモデルでも一般的となっていた丸形4灯式に置き換えられています。フェラーリ512M

 テスタロッサから512TR、F512Mと続いてきた12気筒エンジンをミッドシップに搭載するフェラーリのトップモデルですが、1996年に発表された550マラネロでフロントエンジンに回帰することになりました。

 ロングノーズの2ドアクーペ(ベルリネッタ)は、少なくともそのエクステリアからはテスタロッサに比べて幾分、非日常性が薄れてきた気がします。とはいえ、その価格を考えると、相変わらずのアナザーワールド、という感覚でしかありませんが……。それはともかくテスタロッサの格好良さには惚れ惚れしてしまいます。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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