海外チューナーがバブル期に一躍脚光を浴びる
カーマニアたちが「車高」を気にするようになったのは、遠い昔に不良たちがレーシングカーを自己流で真似た「シャコタン(車高短)」から始まり、1980年代の中頃から輸入され始めた海外チューニングメーカーのコンプリートカーの存在が大きく影響している。
当時、日本の自動車文化ではチューニングメーカーがコンプリートカーを量産することはなく「チューニング=悪」というイメージが定着していた。しかし、バブル経済が盛り上がった時代からVW/アウディはエッティンガーやABT、メルセデス・ベンツはAMGやブラバス、BMWはAHGやハルトゲ、ポルシェはゲンバラやRUF。そのほかフィアットはアバルト、フェラーリはケーニッヒなど名だたる海外チューニングメーカーが手を入れたモデルたちが日本の道を走るようになった。
そして個性的なボディスタイルとともに、チューニングされたエンジンパワーを受け止めるサスペンションによるローダウンされた姿が、カーマニアたちを魅了。さらに、輸入車のカスタムパーツとして欧州のサスペンションブランドから、車種専用のスポーツサスキットが続々と発売されたことで、その流れが日本のカスタム市場を大きく変化させたのである。
現在はスバル×STI、日産×ニスモ、トヨタ×GR、ホンダ×モデューロなど、メーカー系のワークスチューニングブランドがコンプリートカーをリリースすることが当たり前になっている。これも、海外ブランドであるBMWのMシリーズやメルセデス・ベンツのAMGなどの存在が大きな影響を与えたことは間違いない。もちろん、そのどれもが走行性能を向上させるサスペンションを持ち、路面とのロードクリアランスを低く保つローダウンされたスタイルがカーマニアたちを魅了している。
カスタムの多様化でローダウンからリフトアップまで多彩になった!!
ヤンチャな違法改造から始まった「シャコタン」は、輸入車のコンプリートカーから始まった性能重視の「ローダウン」へと移行し、サスペンションは走行性能を追求する「機能部品」として認知されるようになった。もちろん、性能の追求は圧倒的多数を満足させる純正サスペンションとは異なる味付けとスタイルを提供し、最近では走行性能やスタイルだけでなく、一般量販モデルでは実現できなかった「乗り心地の向上」を追求した高級志向のサスペンションキットも登場している。
時代は移り変わり「シャコタン」から「ローダウン」へと呼び方が変わっただけでなく、車高を下げる目的が「悪カッコイイ」から「走行性能の向上」へと変化を遂げた。また、SUVの台頭で車高をアップするリフトアップも大きなトレンドとなり、スタイルアップとともに乗り心地や走破性能の向上が求められているのだ。21世紀の訪れとともに自動車はEVやハイブリッドへとスイッチされ、新たなステージを迎えようとしている。それにともない今後はローダウンやリフトアップというカスタム手法も、新たなスタイルへと変わって行くはずだ。