ターボ車におけるパワーチューンの王道であったスポーツマフラー交換
カスタマイズ派の多くがパワーチューンの第1歩として着手した社外マフラー(スポーツマフラー)への交換。とくにターボ車はその恩恵が大きく、排気システムの構造を純正の隔壁タイプから抜けのよいストレートタイプとすることでマフラー内部の抵抗を減らし、排気効率を向上させることで2Lクラス以上なら約20~30psの出力向上が可能だった。
度重なるマフラー規制によって大幅な性能向上は難しくなった
その状況が変わったのは平成20年12月に発表されたマフラー新規制の決定だ。平成22年4月1月以降の生産車両に装着するスポーツマフラーについては、従来の近接排気騒音に加えて、加速走行騒音の防止(事前にテストして認証を受ける、もしくは加速走行騒音で規制をクリア)が義務付けられた。この基準をクリアした商品でないと車検に通らなくなるというものだ。
さらに平成28年10月以降の生産車両では近接排気騒音の基準がより厳しくなった。「使用過程において新車の騒音から悪化しないこと」を確認する「相対値規制」が施行(ただし、平成22年規制をクリアしていれば現状は今までどおり交換可能)されるなど、ここ10年で規制は段階的に厳しくなっている。
音量規制をクリアしながら性能向上を目指してつねに進化
ただ、各アフターメーカーは手をこまねいているわけではなく、音量を純正同等に抑え、音質を変更した上で排気抵抗を下げつつ、パフォーマンスアップを図る努力を繰り返している。排気パイプを2系統に分け、低速域では片側のパイプに設けたバルブを閉じて排気音量&パイプ径の拡大にともなう低速域でのトルク低下を抑え、高回転になるとバルブを開くことで、排気効率を高めてパフォーマンスを引き出す可変バルブ機構付きマフラーの誕生もその一例だろう。
度重なる規制によって音量は大幅にダウンさせながら、各メーカーの創意工夫で排気効率の向上も実現しているが、平成22年規制以前のようにマフラー単体の交換で大幅な性能向上は望めない。加えてマフラーは厳しい排ガス規制をクリアするための役割も強く、燃費を含めた環境性能向上のために燃料噴射も細かく制御されている。
クルマによっては純正に対しての吸排気の量の変化をECUが感知すると、セーフ機能が働き、出力の変化を抑制する制御を行う車両もある。クルマが新しければ新しいほど、エンジンのマネージメントは複雑になっており、単にマフラーを交換しただけではパワーアップどころか、パワーダウンしてしまう場合もある。排気サウンドの変化やエンジンフィールの向上は味わえるが、パフォーマンスアイテムとしての魅力は以前よりも薄らいでいるのは確かだ。