現在はOEM車が多いものの昔は個性的なモデルが多数
働くクルマとして生まれた軽トラックではあるが、最近ではその荷台をアレンジするなど、遊びのベース車として楽しむ人も増えてきた。
中古車としての流通量も豊富であり、新車でも安い仕様であれば100万円を切る価格で購入できる。維持費も安い軽商用車とあって、気軽に手を出しやすいというのも人気の理由のひとつだろう。そこで今回は、軽トライジリを楽しむためのベース車について考えてみたいと思う。
スズキ・キャリイ
現行モデルのデビューは2013年8月と、すでに長いモデルライフを誇るスズキ・キャリイ。それだけに中古車市場でも物件が豊富となっており、選び放題となっている。また、日産や三菱、マツダへもOEM供給がなされており、それらも含めればかなりの台数が流通していることになる。
デビューは古いものの、軽トラックとしてはライバル車に先駆けて56km/hオフセット衝突法規に対応。2014年には軽トラックとして初めてHIDヘッドライト装着車を設定するなど、先進性は失われていない。
さらに2019年9月の改良では、こちらも軽トラックとしては初めて夜間の歩行者検知も対応した衝突被害軽減ブレーキを設定するなど、時代に即した変更は多岐に渡っている。
また2018年5月にはキャビン後部を拡大し、室内空間を広げた「スーパーキャリイ」をリリース。これにより大きくリクライニングすることも可能となり、より快適性が向上した。
カスタマイズに関しては、モデルライフも長いこともあってアフターパーツは豊富にリリースされており、自分好みの1台を創り上げる楽しみも多い点もポイントだ。
ダイハツ・ハイゼットトラック
昨年12月にビッグマイナーチェンジを実施したハイゼットトラックは、2014年9月に10代目モデルへとフルモデルチェンジ。軽トラックといえばソリッドホワイトが基本カラーとなっているなかで、新色を含む8色のボディカラーを設定したことでも話題となった。
2017年11月には軽トラックとして初となるLEDヘッドライトを採用。2018年5月の一部改良では、先進安全装備の「スマートアシストIII t」を軽トラックとしては他車に先駆けて初搭載した。衝突被害軽減ブレーキは、MT車にも設定されたことも特徴となっている。
2021年12月に実施されたビッグマイナーチェンジでは、2ペダル車のトランスミッションを従来のATから軽商用車としては初のFR用CVTへと換装。従来モデルではMT車にのみ設定されていた「スーパーデフロック」をCVT車にも設定し、イージードライブと走破性の高さを両立させた。
ハイゼットトラックもトヨタへピクシストラックとして、スバルへはサンバートラックとしてOEM供給がなされており、流通台数は多めだ。
カスタマイズパーツはキャリイほどではないがある程度出揃っており、なかには6代目の通称まゆげハイゼット風のフロントマスクにするキットなどもリリースされている。キャリイとは異なるアプローチでのカスタマイズも楽しめそうだ。
ホンダ・アクティトラック
すでにホンダのラインアップから軽トラックは消滅してしまっているが、2021年4月まで製造、販売がなされていたのが4代目となるアクティトラックだった。
そんなアクティトラックの最大の特徴は、そのエンジンレイアウトだろう。前述したキャリイやハイゼットトラックはシートの下にエンジンを備えるFRレイアウトとなっている。だが、このアクティは初代モデルから一貫して、ミッドシップにエンジンをレイアウトしてきたのだ。
ライバル車ではエンジンルームへのアクセス口となるフロントシートの下は、ちょっとした荷物スペースとなっている。そこに装着できる収納ケースがオプションで存在していた。ちなみにエンジンへのアクセスは、荷台に設けられたメンテナンスハッチからするようになっていた。
そのため、メンテナンスの度に荷台の荷物を片付けなければならないという手間はあるものの、ミッドシップらしいハンドリングの良さは軽トラックのなかでも抜きん出ていた。そのため“農道のNSX”という相性が付けられていたほどだったのである。
スバル・サンバートラック
現在はダイハツ・ハイゼットトラックのOEM車となっているサンバートラック。だが、2012年3月まで販売されていたスバルオリジナルのサンバートラックは、いまだに根強い人気を誇っている。
その要因に挙げられるのはやはりメカニズムだろう。軽トラックとしては珍しい四輪独立サスペンションを採用しており、路面追従性は軽トラックのなかでもトップクラスだった。
また4気筒エンジンを搭載しており、搭載位置もリヤで後輪を駆動するRRレイアウトとなっていたことで、空荷状態でもトラクションがかかりやすいという美点があった。
そして軽トラックとしては最後まで過給機付き(サンバーはスーパーチャージャー)モデルを設定していた。フル積載時の動力性能に余裕があったことも、人気の理由のひとつと言えるだろう。
ただ、それだけにすでに中古車では状態の良いモデル、とくにスーパーチャージャー車はプレミア価格に……。新車価格を大きく超えるプライスが付けられた車両も少なくないのが現状だ。