市場の反響を見極めての変更だったが……
オーナーの立場でいうと「自分のクルマが1番」と思う気持ちは誰しも持っているはずだ。そんな気持ちを踏みにじる……といって言葉使いが強過ぎれば、ともすると衝撃に等しいのが“フェイスリフト”。筆者にもそういう気持ちに見舞われた経験が何度かあるが、忘れられないのが、1977年12月にいすゞ117クーペの、角型4灯へのフェイスリフトだった。
アメリカ市場の影響を受け角目ライトを採用
何を隠そう、その半年前に、ずっと愛車にすることを夢見ていた117クーペを(量産型の1800XCだったが)手に入れ、自分のクルマとして乗っていたのだが、あの不世出の美しいバランスの117クーペのエクステリアデザインに何の断りもなく角目を合わせてきたいすゞに、当時、相当な不信感を抱いたのを憶えている。
というか、フェイスリフトの半年前にとある筋からその情報を得て、それは大変! とギリギリのことろで丸目を手に入れられたが、パワーステアリングが付いたこと以外、角目の117クーペが羨ましいと思ったことはなかった(今は多少、許せるようにもなったけれど)。
角型4灯ヘッドライトは初代三菱ギャラン・ラムダが最初だった
ちなみに角型4灯ヘッドランプ(61/2インチ×4インチ)は、1974年にアメリカで生まれ、翌年以降、キャデラックをはじめGM各車で採用されるようになった。日本車での初採用は1976年登場の三菱・初代ギャラン・ラムダ。
なので前述の117クーペの採用は早いほうだった訳だが、フェイスリフト車ではほかに日産ローレル(3代目)、ブルーバード(810型)などがあった。日産車ではフェイスリフトではないが、初代レパードのように、兄弟車で角型4灯と矩形を作り別ける例も。
トヨタ車では2代目のセリカが当初の丸型4灯から、“名ばかりのGT達は、道をあける”のマイナーチェンジモデルで華麗に(?)角型4灯に。
これは同世代のセリカXXと共通イメージのマスクでもあった。セリカは3代目でもヘッドライトのリトラクタブル方式を変えている。
セリカの兄弟車だったカリーナ(2代目)でも、角型4灯にフェイスリフトが行われている。いずれにしても、アメリカ市場の影響がまだ強かった1970年代当時の日本車は、海の向こうで角型4灯が登場したのとほぼ同時に、フェイスリフトをしてまで採用する例が数多くみられたのだった。
希有な例では、角型“縦”4灯を採用したフロントデザインを、途中で無難なベンツ顔(?)に変更したマツダ・ルーチェなども。これは市場の反響を見極めての変更だった。