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低けりゃエライで当然「違法改造」だらけ! 「ノーサス」まで誕生した「シャコタン黎明期」の衝撃

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TEXT: 並木政孝(NAMIKI Masataka)  PHOTO: Auto Messe Web編集部

ヤマンバと同じ志向で若者たちはみな違法改造に勤しむ

 シャコタン全盛期には改造車を掲載する、不良が愛読した2大自動車雑誌に愛車の写真を投稿し、掲載されることが大きなステイタスとなり、そのために自制が効かなくなった改造は「ノーサス」へと辿り着く。ノーサスと呼ばれてはいるが、決してサスペンションを外してしまったものではなく、ノーマルのスプリングを2巻き、2巻き半、3巻きカットして車高の低さを競い合った結果、コイルスプリングを外して極限まで車高を下げたのが「ノーサス」。これにより当時の改造車はまともに走れない状態になってしまった。シルエットフォーミュラ

 これも、読者モデルとして雑誌に載りたいがために「小麦色」→「ガングロ」→「ヤマンバへ」と進化を遂げたギャルと同じ心理なのかもしれない。競い合う気持ちがエスカレートし、最終的にはクルマとしての機能を果たさない「ピリオドの向こう側」まで行き着いてしまったのである。

 あまりにも過激なスタイルとなった違法改造車は警察の取り締まりにおいて「故障」と印刷された赤い紙が貼られ、車両の没収や強制廃車などの法令措置が取れることもあった。逆に「故障」のスッテカーが闇で市販され、フロントウインドウに故障のステッカーを張っていることが「改造車」のステイタスになった狂気の時代だ。

シャコタン文化があったからこそ高度なローダウンが繁栄した

 シャコタンと呼ばれたクルマの乗り心地は最悪で、路面からの衝撃を吸収できないクルマは凹凸を乗り越える度に「シャコタン切り」と呼ばれる蛇行運転が強いられ、踏切やキャッツアイで「亀」と呼ばれるボトムを擦った状態で動けなくなることも多かった。これもスプリングをカット、または外してしまったためにスプリングが伸びず、少しの段差でも動けなくなってしまう「シャコタンあるある」なのだ。

 当時、横浜銀蝿の「羯徒毘璐薫’狼琉(かっとびロックンロール)」の歌詞で「跳ねるライトがバリバリ」と表現されたように、路面の凹凸を収拾できないボディがバウンドしてしまい、つねにボヨヨン、ボヨヨンとした縦揺れをし続け、夜中に仲間とラーメンを爆食した帰り道に胃袋が悲鳴を上げてしまい路肩に仲良く並んで逆噴射したという実話もある。また当時のシャコタンに乗っていた若者には「胃下垂が多かった」というのも都市伝説のひとつである。段差の乗り越え

 現在では考えられないような違法改造がまかり通っていた狂乱の昭和。今のようにSNSやYouTubeなどがなかった時代、自動車雑誌やマンガ、クチコミで日本中へと伝播しながらシャコタンの姿はより過激さを増していった。冷静になって当時を振り返ればスプリングカットやノーサスのクルマがわがもの顔で公道を走り回っていたとことは恐怖でしかないが、その黒歴史が日本を代表する自動車産業の礎、高度なチューニング技術の発展に貢献したことも事実ではないだろうか。

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