クルマ好きなら1度は乗ってみたい魅力的なクルマを開発していた
トヨタのモータースポーツ活動を支えているTRD(Toyota Racing Developmentの略。法人としては株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)。1976年、正式にTRDブランドが立ち上がるが、その前身のトヨペットサービスセンター時代には、映画「007は二度死ぬ」に登場するトヨタ2000GTの「ボンドカー」も制作している(最初のルーツは1954年発足のトヨペット整備株式会社)。
そんな歴史あるTRDではこれまで何台ものコンプリートカーも生み出してきた。今回はそんなTRDのコンプリートカーの代表的なモデルをいくつか振り返ってみることにしよう。
TRD3000GT
TRD3000GTは、1994年の東京オートサロンで発表されたJZA80型スープラベースのコンプリートカーだった。今のSUPER GTの前身である、JGTCに参戦していたスープラ用に開発されたレーシングエアロを、ほぼそのまま装着したロードゴーイングGTカーとして送り出された一台。
当時では珍しいワイドフェンダーを装着(フロント:左右各+30mm/リヤ:左右+25mm)。リヤバンパーはアンダーフロアをディフューザー形状になっていて、ダウンフォースを確保した。ボンネットには大きなエアスリットが入り冷却性能を向上。リヤウイングもGTマシン用をストリート用にモディファイした本格派だった。これらのワイドボディキットは、92万5000円で受注生産された。
TRD2000GT
名前からもわかるとおり、TRD3000GTの弟版。こちらはMR2(SW20)がベースとなっている。こちらもワイドボディ化が計られ、約30mmのサイズアップ! しかもフロントはフェンダー交換ではなく、加工によるブリスターフェンダーを採用。リヤウイングは可変式で、エアロ一式で110万円~だった。
TRD2000
名前が紛らわしいが、TRD2000はカローラ セダンGT(AE101)をベースにしたコンプリートカー。エンジンは標準の4A-Gではなく、2Lの3S-Gに換装していた。ミッションもST202セリカのS54型5速MTを流用(ノーマルより20psアップしたが、車重は70kgも増えている)。当然登録には陸運支局に持ち込む必要があったので、販売はTRDから手が届く、1都3県限定。トータルで10台のみ販売された。
コンフォートGT-Z
コンフォートGT-Zは「走りを忘れかけた大人たちへ贈る、’80sスポーティセダン」をキャッチフレーズに、2003年に期間限定で受注生産したコンプリートカー。ベースは小型タクシー専用車のコンフォートだった。FRの5速MTで、エンジンは3S-FE+オグラクラッチ製のルーツ式スーパーチャージャーTX07を装着。最高出力160ps、最大トルク22.5kg-mを誇った。
足まわりも減衰力4段調整式のスポーツサスペンションとスタビライザー、ストラットバー、専用スポーツパッド&シューでチューニング。60台が生産されたと言われている。
カローラアクシオGT TRD Turbo
140系トヨタ・カローラアクシオ(1.5X)がベースのターボ付コンプリートカー。専用ターボチャージャーとインタークーラー、ECUでチューニングされた1.5Lターボは、150ps/20.0kg-mのスペック。サスペンション、エアロも当然TRD製を装着している。販売価格は235万2381円だった。
カローラフィールダーGT TRD Turbo
カローラフィールダーGT TRD Turboは、140G系トヨタ・カローラフィールダーがベースのターボ付コンプリートカー。このクルマもボルトオンターボと専用インタークーラー、ECUで150ps/20.0kg-mにチューニング。
ベースは1.5X “G EDITION”と1.5Xの5速MTで、価格は販売店が独自に定めていた。TRDによる架装車のため、持ち込み登録が必要だった。
14R-60
極めつけは14R-60。14R-60は、トヨタテクノクラフト(現・トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)の創立60周年を記念して、2014年10月に100台限定で販売されたコンプリートカー。車名の「14」は「2014」、「R」は「Racing」、「60」は「60周年」を意味している。
エンジン本体こそノーマルだが、カーボンフェンダーフィンやカーボンルーフ、後部座席撤去による2シーター化、18インチマグネシウム鍛造ホイールなどで軽量化され、足まわり、エアロパーツ、駆動系にはレーシングカーを作る手法を投入。ボディ剛性も大幅にアップされている。価格は630万円だったが、即時完売となった。