ドライバーズカーに多い「スパイダー」
「スパイダー(spider)」の歴史は、少しややこしい。元は「フェートン(phaeton)」という、4輪馬車で座席が前後2列あるが、前列のみ幌屋根が付き、後列座席はベンチ状の簡素なタイプだった。つまり主人と御者が前列、従者らは後列という座席オーダーだった。フェートンは屋根つき4座のベルリーヌやリムジンより簡素だったので、アメリカで流行ったあと、欧州に採り入れられ、4輪の上に車体を懸架した様子からフランスあたりで「アレニェ(蜘蛛のこと)」などと呼ばれた。
19世紀中ごろになって英米圏でも「スパイダー(蜘蛛)」と呼ばれるようになり、イタリアやドイツをも巻き込んで広くスパイダーの呼び名が普及したようだ。やがてスパイダーは4座以外にも2座のオープンカーをも指すようになるが、とくにドライバーズカーであることに重きのあるクルマに名づけられる傾向があるだろう。
2000年代に流行った「電動リトラクタブルルーフ」
そう考えると、近年はめっきり減ったが一世を風靡した「電動リトラクタブルルーフ」あるいは「CC(クーペ・カブリオレ)」を、各メーカーが競い合うように出していたころは、オープンカーの全盛にして絶頂期だったのかもしれない。
ちなみに「アペルタ(aperta)」はイタリア語の代名動詞「aprirsi」の活用形で、「開いた」とか「開く」の意。英語の「open」の遠い祖先でもあり、「April」(4月)や「aperitif」(アペリティフ、食前酒)とも同根であることを覚えておくと、酒のツマミになるかもしれない。