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「カブリオレ」「スパイダー」「ロードスター」などオープンカーの呼び名多すぎ! というわけで語源を探ってみた

モータリゼーション以前の馬車文化にさかのぼる

 今年もそろそろ春! となればオープンカー乗りには、屋根を開け放つべく待ちに待った季節の到来。でもちょっと待てよ、おれのは「カブリオレ」だけど、きみのは「ロードスター」で、あいつのは「スパイダー」で、こいつのは「コンバーチブル」。あ、「ラ・フェラーリ・アペルタ」なんてのもあったっけ。でもなんでオープンカーって、こんなに呼び名がいっぱいあるんだろう?

 ざっとひと言でいえば、オープンカーを含む今日の自動車のボディ形式は多かれ少なかれ馬車、つまり「コーチ(coach)」から始まっている。

ちょっと高級感の漂う「カブリオレ」

 まず「カブリオレ(cabriolet)」は、一説によれば17世紀にフランスで発明された「簡便な」2輪馬車のこと。とはいえ、何なれば2頭か4頭だてで4輪、4座かつ屋根付き馬車の「ベルリーヌ」が、デフォルトで移動の道具だった人々にとっては簡便というだけで、庶民はむしろ荷車の荷台かロバの背中に腰かけられたらモビリティの恩恵に預かっている、と言えるような時代だった。ようは軽快で瀟洒、かつクラス感のある呼び名が、「カブリオレ」というワケだ。

 ちなみに「cabriolet」の由来はラテン語の「capra」(=母羊に連れられた幼い羊)に由来し、そうした子羊がぴょんぴょん軽快に跳ねている様を「cabriole」、さらに矮小化の接尾辞である「t」を付けて「cabriolet」となったといわれる。それが長じて、2座の小さな屋根の開く自動車を指すようになったのだ。

本当に「馬」の呼び名だった「ロードスター」

 また「ロードスター(roadster)」はアメリカ起源の言葉で、19世紀に長距離行に向いた馬を指してそう呼ばれていたものが、徐々にバイクや自動車を表すようになっていった。

 20世紀前半にはモータースポーツのクラス分類にも使われ出したが、概して座席が1列のみ、屋根がないか簡易な幌屋根をもつツーリングカーのことだった。よってロードスターにはつねに、グランドツーリングのニュアンスが漂う。

「クーペ」とセットの「コンバーチブル」

「コンバーチブル(convertible)」は屋根アリ/ナシどちらにもなる、という意味で、屋根が「2WAY」であること、あるいは「クーペ」に対してオープンのボディが用意されたモデルにも付けられやすかった。「シボレー・コルベット」などは、クーペに対するコンバーチブル、という典型だ。

 今では考えにくいことだが、アメリカあたりではワゴンの屋根、つまり荷台の部分だけ屋根を下ろして開けられるようなモデル(リトラクタブルルーフと呼ばれることもある)が1960年代半ばぐらいまでは多々あった。これは幌馬車の時代からの名残りで、常設の覆い屋根が付いたものは「ワゴン」や「エステート」に、荷室が開けたままのものは「ピックアップトラック」に、さらにキャビンのルーフと同じ高さのシェルでカバーしたものが「SUV」になったといえる。

ドライバーズカーに多い「スパイダー」

「スパイダー(spider)」の歴史は、少しややこしい。元は「フェートン(phaeton)」という、4輪馬車で座席が前後2列あるが、前列のみ幌屋根が付き、後列座席はベンチ状の簡素なタイプだった。つまり主人と御者が前列、従者らは後列という座席オーダーだった。フェートンは屋根つき4座のベルリーヌやリムジンより簡素だったので、アメリカで流行ったあと、欧州に採り入れられ、4輪の上に車体を懸架した様子からフランスあたりで「アレニェ(蜘蛛のこと)」などと呼ばれた。

 19世紀中ごろになって英米圏でも「スパイダー(蜘蛛)」と呼ばれるようになり、イタリアやドイツをも巻き込んで広くスパイダーの呼び名が普及したようだ。やがてスパイダーは4座以外にも2座のオープンカーをも指すようになるが、とくにドライバーズカーであることに重きのあるクルマに名づけられる傾向があるだろう。

2000年代に流行った「電動リトラクタブルルーフ」

 そう考えると、近年はめっきり減ったが一世を風靡した「電動リトラクタブルルーフ」あるいは「CC(クーペ・カブリオレ)」を、各メーカーが競い合うように出していたころは、オープンカーの全盛にして絶頂期だったのかもしれない。

 ちなみに「アペルタ(aperta)」はイタリア語の代名動詞「aprirsi」の活用形で、「開いた」とか「開く」の意。英語の「open」の遠い祖先でもあり、「April」(4月)や「aperitif」(アペリティフ、食前酒)とも同根であることを覚えておくと、酒のツマミになるかもしれない。

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