ローグリップか? ハイグリップか?
コントロールする技術を磨くなら極端なグリップ力は不要、初心者だからこそ安全のために高いグリップ力が必要。人によって意見が真逆になることも往々にあるが、ビギナーがサーキットで使うべきタイヤとは何だろうか。大きく分けるとローグリップ派とハイグリップ派だが、それぞれの根拠をあらためて掘り下げてみたい。
マシンコントロールなどを身に着けたいならローグリップ
まずはローグリップで十分という考えから。といっても別にスタッドレスで走れとか、グリップが低ければ何でもいいワケではなく、あくまでも『必要にして十分なグリップ』だ。
ハイグリップタイヤに運転のミスや粗さをカバーし、目立たなくしてしまう面があるのは否めない事実。パワーに対してグリップが過剰に大きければ限界域の挙動を体験することは難しく、テールスライドやホイールスピンをコントロールするテクニックを身に付けにくい。仮にハイグリップタイヤでも破綻するようなスピード域では、マシンを正しく安全に制御するなんてビギナーには困難で、速度に比例してクラッシュ時のダメージも大きくなる。
また重心が高いクルマとの組み合わせでは、転倒しやすくなるので危険という声も多い。とはいえパワーがそこそこある車両にエコタイヤ程度のグリップ力では、アクセルを少しラフに操作しただけで挙動が乱れてスピンしたり、タイヤのブロックが負荷に耐え切れずボロボロになる可能性も。
ローパワーの軽自動車などは問題ないかもしれないが、目安としては『セカンドグレード』とも呼ばれる、街乗りからスポーツ走行まで対応するタイヤを選びたい。
パワーに見合ったハイグリップタイヤは必要
次は初心者もハイグリップを使うべきとの考え。スピンやコースアウトは施設やほかのクルマに迷惑をかける場合もあるし、初心者であれば低速であってもパニックに陥り冷静に対処するなんてムリだ。そう言われると確かに説得力がある。
上で書いたとおり、ハイパワー車にローグリップのタイヤは危険なケースも多々あるし、いつリヤが出るか分からず不安な気持ちを抱えながら走っても楽しくない。おそらくハイグリップ否定派もそんな理屈は十分に承知しており、パワーに見合ったタイヤを履くことは誰も反対しないと思われる。
敬遠するのはパワーが負けてしまうレベルのハイグリップで、初心者にセミスリックタイヤなんてアンバランスな組み合わせは、肯定派と否定はのどちらにせよ間違いなく推奨はしないはずだ。
セミスリックタイヤは一般的なラジアルタイヤより高価なだけじゃなく、路面状況や競技でコンパウンドが細かく設定されていたり、減りも早ければ摩耗したときのグリップ低下も大きいなど、性能を発揮するシチュエーションが限定されてしまう。異次元のグリップ力というイメージに踊らされて履いたとしても、美味しい部分をまったく使えないまま終わるのが関の山だと思う。
結論は小排気量車やローパワー車ならセカンドラジアルで十分、それなりにパワーがあるクルマであればハイグリップラジアル、セミスリックはもっともっと経験を積んでからでいい。なおスポーツカーの純正タイヤすべてに当てはまるとは言わないが、初心者がサーキットで練習するには十分な性能を備えているので、最初はそれを使い切ってから履き替えるのも手だ。