「物語を紡いでいけるクルマ」に乗りたかった
マツダ・ロードスターは現行のND型で4代目。「昔は若者でも買える値段だったけどすっかり高くなって……」とはよく言われる話だが、それでも本当に欲しければ突っ込んでいってしまう勢いこそ若者の特権だ。ごくフツーの家庭で生まれ育った20歳の青年が新車のロードスターを、しかもオプションパーツてんこ盛りで購入したとのことで、納車から1週間後、まだ興奮さめやらぬ新オーナーに熱い想いを語ってもらった。
クラシック・フォルクスワーゲンに囲まれて育つ
千葉県の鈴木海翔(かいと)さんは2001年7月生まれの20歳。高校卒業後に就職し、バイクショップ勤務を経て、いまは自動車教習所のフロントスタッフとして働きながら指導員を目指して勉強中だ。
ご実家には1957年式フォルクスワーゲン・タイプ1(ビートル)と、1962年式タイプ2(ワーゲンバス)、それも貴重な23ウィンドウがあり、そんな家庭環境もあってか、海翔さんも自然と旧車とフォルクスワーゲンが好きで育ってきた。
就職してから運転免許を取得し、高年式のビートル(現在不動)と「ホンダ・モンキー」を所有するとともに、去年の夏に1981年式「ホンダ・アクティストリート」(VD型)のハイルーフモデルを入手。これはかつて実家で乗られていた個体を、縁あって買い戻したものだ。
まさか自分が新車を買うことになるとは……
ところが数カ月でアクティのオルターネーターが壊れてしまった。それをきっかけに、「新車を1台くらい乗ってみるのもいいかも?」と、さまざまなディーラーを回ってみることにした海翔さん。とはいえ、当初はマツダにはまったく興味がなかったそうだ。クルマ選びの基準は、旧車好きならでは。
「人とつながれて、物語を紡ぐことができて、笑顔になれるクルマに乗りたかったんです」
あるとき、何の気なしに近所の「千葉マツダ木更津店」を訪れてみたら、ロードスターのボディカラー「ソウルレッドクリスタルメタリック」にまず目を奪われた。エンジンをかけてもらうと「SKYACTIV-G 1.5」エンジンの音圧が耳に残ったそう。
「さっそく試乗させてもらったら、いまどきのクルマなのにVWタイプ181“シング”(ジープ風のオープンカー)みたいなダイレクトな楽しさがあるんです! そして対向車のロードスターが手を振ってきてくれて、こちらも手を振り返して……。これだ! って思って、試乗後すぐに契約してしまいました」
人間味のあるロードスター開発史も魅力
昨年10月半ばに試乗&契約してから、ロードスターのことをトコトン勉強し、開発ストーリーに秘められた人間味ある物語にも心ひかれた。30年以上もシリーズを継続し、「ふたり乗り小型オープンスポーツカー」として世界で一番売れたクルマであるという点も、「世界一売れた大衆車」フォルクスワーゲン・ビートルに親しんでいた海翔さんにとって、相通じるものを感じたようだ。
「いままで自分でもマツダに興味がないと思っていたんですが、振り返ってみると、国産車で一番最初に好きになったのは、小学生のときに旧車イベントで見た“コスモスポーツ”だったんです。オーナーさんがエンジンをかけてくれて、ロータリーの音と質感に感動しました。それを思い出して、運命を感じましたね(笑)」