ラリー1マシンのパフォーマンスはいかに
気になるラリー1車両のパフォーマンスについてトヨタのセカンドチーム、「トヨタGAZOOレーシングWRTネクストジェネレーション」で、GRヤリス・ラリー1をドライビングする勝田貴元は、「センターデフがなくなったことに加えて、リヤにバッテリーを積んでいるので、全体的にアンダーステアになっているんですけど、コーナーの出口ではスナップオーバーでスピンがしやすい。ちょっとピーキーな部分がありますね」と語る。
さらに勝田は「空力パーツが制限されたことで高速域での安定感も違います。WRカーではナチュラルな挙動だったけれど、ラリー1では不安定な感覚があるので、そのあたりを合わせ込んでいく必要がありますね」と付け加える。
この感覚は勝田だけでなく、トヨタ勢の全ドライバーが抱いたようだが、開幕戦のモンテカルロではSSを重ねるごとに、このハイブリッドシステムを持つラリー1車両のドライビングに対応。事実、計5回のSSウインを獲得したセバスチャン・オジエが2位で表彰台を獲得したほか、序盤で出遅れたカッレ・ロバンペッラも計3回のSSウインで猛追し、4位入賞を果たすなど、GRヤリス・ラリー1はまずまずのスピードを見せつけた。
しかも、デイ1の勝田を除けば、ハイブリッドシステムのトラブルはほとんどなく、トヨタGAZOOレーシングWRTのヤリ-マティ・ラトバラ代表も「安全性と信頼性、ハイブリッドの機能に重点を置いて開発してきたが、開幕戦のモナコで、その3つの部分を確認することができた」と手応えを語る。
各マシン横並びの現状から最初にリードするのは?
とはいえ、開幕戦を見る限り、いち早くラリー1車両の開発に着手していたMスポーツ・フォードのプーマ・ハイブリッド・ラリー1の完成度が高く、セバスチャン・ローブが自身80勝目を獲得したほか、クレイグ・ブリーンが3位で表彰台を獲得。さらにマネジメントの変更で、マシンの仕様変更を行っていたヒュンダイは主力モデルのi20 Nラリー1にハイブリッドシステムのトラブルが頻発したほか、タイヤ選択のミスにより、ティエリー・ヌービルの6位が最上位にとどまることとなったが、ヌービルがSS15でベストタイムを叩き出したことからも潜在能力の高さが伺える。
「われわれのクルマはグリップレベルの低いナローなSSで速く、Mスポーツ・フォードのクルマはスムースでワイドなSSで速かったがパフォーマンスは僅差。それにトラブルが頻発したヒュンダイも改善してくると思うので、今後はサスペンションやデフのセッティングを煮詰めたい」と語るのはトヨタのラトバラ代表だが、その言葉どおり、現時点で各チームのラリー1車両のポテンシャルはほぼ同レベルにあるように見える。それだけに、どのマシンが抜け出し、主導権を握るのか、今後もWRCにおける三つ巴のバトルに注目したい。