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まさかのマセラティとシトロエンが共同開発! 華がないのに売れた「メラク」という異端スーパーカー

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: 原田 了/MASERATI

初のミッドシップとなったボーラの弟分として誕生したメラク

 レースを捨ててロードゴーイングカーに専念するようになったマセラティですが、経営的には厳しい時代が続いていました。そして1968年にはオルシに代わってフランスの自動車メーカー、シトロエンがマセラティに救いの手を差し伸べます。

 両社のジョイントベンチャーの第一作となったのはシトロエンSM。マセラティが設計開発を務めたV6エンジンをフロントに搭載した前輪駆動(FWD)で、FWDとして初めて、200km/h以上の速度域までを実用化しようとする意欲作でした。シトロエンSM

 続いて1971年のジュネーブショーではマセラティのロードゴーイングカーとして初のミッドエンジンとなったボーラが登場します。モノコック・フレームに前後ダブルウィッシュボーン式のサスペンションを装着し、イタルデザインを興したジウジアーロがデザインしたボディを架装。マセラティ・ボーラ

 搭載されるエンジンはマセラティが得意としてきたV8ツインカムで、4輪ディスクブレーキの制御などにはシトロエンのノウハウが盛り込まれていました。そう、ボーラはマセラティとシトロエンの共同開発で誕生したのです。マセラティ・ボーラ

 そしてその弟分となる今回の主人公、メラクが1972年のパリ・サロンでデビューすることになりました。ボディデザインは、ボーラと同じくジウジアーロが手掛けています。というかほぼ同じボディで、キャビンから後方のデザインが変更されていました。マセラティ・メラク

 ボーラではリヤ部分がファストバック形状となっていて、ボディ上半部分が一体式のカウルで、リヤヒンジで開けられるようになっていました。ですが、メラクではエンジンフードがフラットになり、そのフードのみが前ヒンジで開けられるようになっています。マセラティ・メラク

 一見すると、両者ともにファストバックのシルエットを持っていましたが、じつはメラクはルーフはキャビンまでで、その後方には“梁”を渡していたのです。またエンジンがボーラのV8からシトロエンSMのために開発したV6にコンバートされていたこともあってキャビン部分が少し拡大され、広くはないものの+2の後席が用意されていました。マセラティ・メラク

 パワー的にはボーラの4.7L V8/310psに対してメラクは3L V6/190psと非力さは否めませんでしたが、80kgほどシェイプアップされたこともあって、軽快なハンドリングは好評を博していました。

 ちなみに、油圧によるセルフセンタリング式ステアリングや4輪ディスクブレーキ(ローターはベンチレーテッド・タイプ)のサーボシステムなどはシトロエンのテクノロジーが盛り込まれています。1975年にはエンジンを220psにパワーアップしたSSグレードが登場しました。マセラティ・メラク

 国内販売価格で見るとボーラの1350万円に対してメラクは967万円とリーズナブルな価格設定となっていたことも大きな武器となったようです。そのことは、ボーラが600台弱しか生産されなかったのに対してメラクの方は約1800台が生産されてたことからも証明されています。

 フェラーリやランボルギーニのようなV12ほど華やかではありませんでしたが、より現実的なスーパーカーだったことは間違いありません。もちろん、しがないフリーランスにとっては非現実的なクルマだったのですが……。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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