「まさか」の悲劇にしっかり備えて安全に楽しむには
もう少しで待ちに待った春がやってきます。気温とともに水温も少しずつ上がり始め、水辺のキャンプが楽しくなる季節は幸せな時間を提供してくれるはず。しかし、水辺のキャンプは思わぬ事故に遭遇することもあるので注意が必要です。今回は水辺のキャンプを題材に、恐ろしい水難事故を未然に防ぐ方法を伝授いたします。
いつ牙をむいてくるかわからないのが大自然
春の訪れは川や湖、海などの水辺でのキャンプが楽しくなる季節の始まりです。そして本格的な夏シーズンには渓流や湖畔でのキャンプ、海水浴など水辺へと出かけることも多くなることでしょう。キラキラと陽光を反射する水面、躍動感に溢れる浜辺の風景、サラサラと流れる川の美しさは自然が生み出す偉大なる芸術。
ところが自然はいつ何時「牙」を剥き出しにするか、予測できません。ちょっとした心の緩み、自然への敬意を忘れた瞬間に「命」を失いかねない事故を起こすことになるのです。水辺のキャンプを楽しむためにはしっかりとした心構えと事前の準備、そして自然からのメッセージを受信するアンテナを張り巡らせておくことが肝心です。
その1:川の上流
渓流が近いキャンプ場では、天候の変化に注意すること。上流方面の山に黒い雲が掛かっている場合には急激な増水が起きる可能性があります。また、澄んでいた水が急に濁り始め、水面に葉っぱや枝などが流れてきた場合は危険を知らせるサイン。上流側で大雨が降り、水位が急上昇する可能性があるので避難する準備を始めて下さい。
渓流で水遊びをする場合には子どもたちから目を離さず、くるぶしよりも深い場所には立ち入らないよう注意すること。渓流の水温は夏場でも低く、見た目以上に流れが速いのでしっかりと見守り、浅い場所で遊んでいてもライフジャケットを装着させることが事故を未然に防ぐ有効な手段になるのです。
その2:川の中流・下流
流れが緩やかに見える中流、下流域でも川の流れは意外と強く、足を滑らせてしまうと簡単に流されてしまいます。護岸されている場所は安全に見えますが、水位の増減によってコンクリートが濡れていることも多く、コケや汚れによってズルズルと滑り台のように水になかに滑り落ちてしまう事故が多発しています。滑りやすい護岸は緩やかな角度に見えても這い上がることが難しく、そのまま溺れてしまう可能性も高いということを覚えておきましょう。
岸沿いに設置されている「ヘラ台」と呼ばれる釣り座は、放置されているものは木材が腐ってしまい崩れやすいものもあり、飛び乗った瞬間に水中に転落してしまうこともあるので注意してください。
その3:ダム・湖
湖やダム湖の場合、水辺から急深になっていることも多いので立ち入るのは危険です。釣りやボート遊びをする場合には子どもだけでなく、大人もライフジャケットを装着すること。ライフジャケットを選ぶ場合には動きが邪魔にならない、インフレータブル式(膨張式)のアイテムを選ぶのも賢い方法です。
ボートから転落した場合には左右方向から這い上がろうとすると転覆する恐れがあるため、這い上がる場合や救助するときにはボートの船尾から行うこと(小さなローボートの場合)。救助する場合には落水した人のライフベストの両肩を掴んで引き上げてください。ボートに這い上がれないときには体温が失われないよう、体を丸めて救助を待ちましょう。
その4:海
海辺のキャンプや海水浴は楽しいものですが、海が凪いでいる状態でも油断してはいけません。海岸には押し寄せた波が戻って行く「離岸流」があり、その流れに乗ってしまうと簡単に沖へと流されてしまいます。離岸流が発生する場所は押し寄せた波が左右に分かれながら集まって行く場所があります。水面がザワザワしている場所、波が重なって戻る場所、砂浜が部分的に掘れている場所は離岸流のポイントになるので、海水浴をする場合には避けてください。もしも流されてしまったときには慌てて海岸に戻ろうとはせず、流れに乗りながら横方向に逃げることが大切です。遠浅の海岸でも離岸流によって海底が急に深くなっている場所(ミオ)があるので注意しましょう。
子どもたちからは目を離さず、浮力体の入ったライフベストを装着させておくことが水難事故を未然に防ぐ方法です。もちろん、お酒を飲んで海に入るのは危険行為。「飲むなら泳ぐな、泳ぐなら飲むな」を守りましょう。
備えあれば憂いなし、ライフジャケットの用意を
春からのお楽しみシーズンに突入する水辺のキャンプ。自然が織りなす美しい風景は絶品ですが、水辺には大きな危険が潜んでいます。水辺で遊ぶ場合には子どもたちから決して目を離さず、必ずライフジャケットを装着すること。ライフジャケットを身に付ける場合には左右の紐やストラップを調整し、浮力体式のベストは股を通すベルトをしっかりと装着すること。股のベルトを通さないと救助する時にベストが体から抜けてしまい、引き上げられないこともあるからです。
自然と向き合うキャンプは全てが自己責任。水難事故に合わないためにも自分の命は自分で守り、子どもの命は親が守る「責任」があることを忘れないでください。備えあれば憂いなしという言葉があるように「用意周到」であることが楽しいキャンプの心得なのです。