ターボチューニングの第1段階としても人気
ターボチューンといえば「ブーストアップ」である。エンジンに空気を押し込む“ブースト圧”を上げるチューニングであり、もっとも手軽にコスパよくパワー&トルクを引き上げられるオススメチューンなのだ。
ターボからエンジンに空気を押し込む量を調整する
ターボエンジンは排気ガスの勢いでタービンを回し、そのタービンの力でエンジンに空気を押し込むことで、排気量以上の酸素を燃やす。酸素もガソリンもたくさん燃やすことができ、大きなパワーとトルクを出すことが可能だ。
このエンジンに空気を押し込む圧力をブースト圧という。ブースト圧が上がれば、もっと強い力でエンジンに空気を押し込むので、よりたくさん酸素が入る。合わせてガソリンもたくさん噴射すれば、爆発力はアップするのだ。
基本的にはブースト圧を上げたらパワーアップするのだが、その効果にはある程度の限度がある。いくらブースト圧を高めても、ポートや燃焼室の形状などさまざまな要因で出せるパワーには限界がある。
それに一定以上ブースト圧を高めるとノッキング(異常燃焼)が起きて、エンジンが壊れることにもつながる。そこでノーマルカーでは、自動車メーカーが安全マージンを確保して定めたブースト圧に設定している。これを壊れない範囲でアップさせるのが、ブーストアップチューンだ。
現代のクルマであればECU書き換えでもブーストアップは可能
やり方は基本的にはECUを書き換えて、設定されているブースト圧を高める。それに合わせて、燃調や点火時期なども適切に調節する。ということをチューナーが行ってくれる。もしくは、有名メーカーにECUを送ることで適切なデータをインストールしてくれるのだ。
車種によっては追加でブーストコントローラーを取り付けることで、手元でブースト圧を上げたり下げたりもできる。大体はハイブーストとローブーストの切り替えがあり、ここぞというときはハイブーストに設定を変えることも可能。その切替スイッチをステアリングにボタンとして付けると、スクランブルブーストボタンとしても使える。映画などでライバルに負けそうになるとそういったボタンを押し込んでいる場面がよくあるかと思うが、それと同じように、ブースト圧を高めてパワーアップが可能になるのだ。
その効果はというと、ブーストアップでノーマルから10~20%のパワーとトルク向上が可能。この変化はかなり大きく、誰もが乗ればわかるレベルと言える。140psのスイフトスポーツだと160~170psくらいが可能となり、R35GT-Rだと、そもそも約550psなので、サクッと600~650psになってしまうのだ。
NAエンジンでパワーを10~20%高めようと思ったら、軽く50~100万円コース。吸排気系をフルにチューニングしてギリギリ達成できるかくらいで、やはりトータルコストは掛かってしまう。それ以上を求めようとすると排気量アップや、大幅なチューニングが必要で100万円以上は軽く超えてしまう。
しかし、ブーストアップならECU書き換えで10~15万円くらいが相場。ブーストコントローラーを追加しても10万円弱。そこにスポーツ触媒とマフラーを交換するとさらに30万円ほどは掛かってしまうが、追加で5~10%くらいのパワーアップも狙える。ターボ車のブーストアップは極めてコストパフォーマンスが高いチューニングなのだ。そのため、ブーストアップはオススメチューニング不動の1位である。せっかくターボ車に乗っているなら、やらなきゃもったいない! というくらいのチューニングなのだ。
ノウハウのあるショップに任せれば安心して乗れる
気になるのは寿命やダメージだ。パワーアップするということは、それだけエンジンやタービンに負担がかかり、寿命が短くなることも否定はできない。しかし、過度のブーストアップではなく、純正ブースト圧に比べて20~30%ほどのブースト圧アップで、しっかりと燃料噴射量や点火時期を詰めれば、決して即寿命が短くなることはない。普通に使ってきちんとメンテナンスすれば、10万kmでも20万kmでも走ることが可能だ。
逆に言えば過度に高いブーストを掛ければノッキングでピストンが溶けたり、ピストンのダメージによるヘッドガスケット抜けが起きたり、パワーの出し過ぎによってコンロッドが折れることもある。
昔はプライベーターが知識もないまま、強引にブースト圧を制御するアクチュエータを細工してブーストアップ。過給圧は高まったものの、燃調や点火時期はでたらめなままで、あっという間にエンジンブローということもあった。そんなことから、ブーストアップはライフが短くなるとか、あのエンジンは300ps持たなかったとか、謎の都市伝説がたくさん生まれている。きちんとしたブーストアップであれば、問題なく普通に長期間乗れる。それが現代のチューニングである。