そもそも街乗りでは練習にならない
では、とにかく普段乗りで練習して、いつかサーキットを走る日に備えよう……と思うのが普通だが、これがまた、街乗りでは練習にならないのだ。なぜなら、圧倒的にブレーキを踏み込む量が少ないから。
街なかではサーキットのような強いブレーキは掛けないので、むしろアクセルをアオるときのわずかな踏力変化がブレーキに伝わり、アクセルをアオるたびにブレーキがガックンガックンしてしまうのが関の山だ。究極に柔軟な足首があればできるかもしれないが……。
意外にも動作の素早さは必要ない
「電光石火のシフトダウン」と漫画「頭文字D」に出てきたような気もするが、じつはヒール&トゥを急ぐ理由はない。減速中のことなので、加速性能には関係ないのだ。エンジンブレーキを瞬時に利かせたいなら、速く操作したほうがいいが、エンジンブレーキもあまり高回転で多用するのはリスクが大きい。エンジン自体への負荷にもなるし、オーバーレブしてしまうこともありうる。
できるだけヒール&トゥを減らすプロもいる
佐々木雅弘プロはできるだけ回数を減らす派。ブレーキ踏力がわずかでも乱れる可能性があるなら回数を減らして、エンジンブレーキに期待する制動力の分だけ、しっかりとフットブレーキが利くようにセットするタイプだ。
「例えば86レースで富士の1コーナーは5速から2速まで落としますが、僕は5速のままフルブレーキして、加速直前にちょっとだけヒール&トゥして2速入れてます」という。
ヒール&トゥはできたほうが良いテクニックだが、多用すればいいというわけでもない。いざというときに使えた方がいいけれども、街乗りでの練習は後続車への迷惑にもなりかねないので、できるだけクローズドコースでの練習から始めたいところだ。