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MT車乗りの「必修科目」! 間違った練習も多い「ヒール&トゥ」のホント

街乗りでは不要だがサーキットでは欠かせないテク

 マニュアルシフトの見せ場と言えば「ヒール&トゥ」。ブレーキをしながらの華麗なシフトダウンはサーキットでは必須のテクニックであり、できて損はない技術。では、どんな場面で必要で、どうしたらできるようになるのか。

至ってシンプルだが奥の深い操作

 右足でブレーキを踏んだままの状態でアクセルを踏み、エンジン回転を上げてシフトダウンをショック無く行うためのテクニックが「ヒール&トゥ」である。つま先(トゥ)でブレーキを踏みながら、かかと(ヒール)でアクセルを瞬間的に踏んでエンジン回転を上げることから、この名前で呼ばれるようになったテクニックだ。

メリットは「ショック緩和」、「減速補助」、「加速準備」

 ヒール&トゥの狙いは3つある。まず、シフトダウン時のショックをなくすこと。減速してギヤを落としていくときにエンジン回転を上げてやらないと回転差があって、タイヤは瞬間的にブレーキを掛けたようになってしまう。リヤ駆動車だと、曲がりながらヒール&トゥしないでシフトダウンをすれば、シフトロックという現象でスピンしてしまう。現代でも必須のテクニックなのだ。

 次の狙いは、エンジンブレーキを使うこと。ギヤをドンドン落としていくことで、高回転でのエンジンブレーキを使って減速を強めようというわけだ。とくにリヤ駆動だと、リヤブレーキはそもそもそれほど強くは利かないので、エンジンブレーキを活用してできる限り強く止めたいと思うドライバーは多い。

 そして、3つ目の狙いが、立ち上がり加速に備えること。コーナーを曲がってから加速に移りたいときに、あらかじめギヤを落としておかないと、エンジン回転数が落ちていてモワーッとした加速しかできなくなってしまう。

 以上の理由から、現代でも、できるものならやったほうが良いテクニックといえる。もっとも最近だと、Z34型「フェアレディZ」のようにこのアクセルのアオりをクルマ側でやってくれる機能もあるし、先代「86/BRZ」であれば「ECU-TEK」というツールでECUチューンをすると、シフトダウン時のブリッピング機能を追加することもできる。

修得のオススメは4速から3速へのシフトダウンから

 では、どうすればできるようになるのか? まずは、まっすぐシフト操作ができる4速から3速へのシフトダウンがオススメ。ギヤ比も近いクルマが多いので、アクセルをアオり損ねてもスピンが起きにくい利点もある。

 とにかく回転を合わせることに終始してしまいがちだが、大切なのは「いかに安定してブレーキングをするか」である。その間についでにギヤを落としてエンジンブレーキを使いつつ、加速に備えてギヤ落としておこっと、というのがヒール&トゥなので、まずはしっかりブレずにブレーキを強く掛けられることのほうが大切である。

 あとは、回転が合わないかなぁ~と思ったら秘技「半クラッチ」作戦である。発進時のようにギヤを落としたあとのクラッチをじわっとつないでやれば、最悪、回転が合っていなくても大丈夫。ちょっとはクラッチが減るかもしれないが、ほんのちょっとだし、盛大にスピンするよりも遥かに失うものは少ない。

そもそも街乗りでは練習にならない

 では、とにかく普段乗りで練習して、いつかサーキットを走る日に備えよう……と思うのが普通だが、これがまた、街乗りでは練習にならないのだ。なぜなら、圧倒的にブレーキを踏み込む量が少ないから。

 街なかではサーキットのような強いブレーキは掛けないので、むしろアクセルをアオるときのわずかな踏力変化がブレーキに伝わり、アクセルをアオるたびにブレーキがガックンガックンしてしまうのが関の山だ。究極に柔軟な足首があればできるかもしれないが……。

意外にも動作の素早さは必要ない

「電光石火のシフトダウン」と漫画「頭文字D」に出てきたような気もするが、じつはヒール&トゥを急ぐ理由はない。減速中のことなので、加速性能には関係ないのだ。エンジンブレーキを瞬時に利かせたいなら、速く操作したほうがいいが、エンジンブレーキもあまり高回転で多用するのはリスクが大きい。エンジン自体への負荷にもなるし、オーバーレブしてしまうこともありうる。

できるだけヒール&トゥを減らすプロもいる

 佐々木雅弘プロはできるだけ回数を減らす派。ブレーキ踏力がわずかでも乱れる可能性があるなら回数を減らして、エンジンブレーキに期待する制動力の分だけ、しっかりとフットブレーキが利くようにセットするタイプだ。

「例えば86レースで富士の1コーナーは5速から2速まで落としますが、僕は5速のままフルブレーキして、加速直前にちょっとだけヒール&トゥして2速入れてます」という。

 ヒール&トゥはできたほうが良いテクニックだが、多用すればいいというわけでもない。いざというときに使えた方がいいけれども、街乗りでの練習は後続車への迷惑にもなりかねないので、できるだけクローズドコースでの練習から始めたいところだ。

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