プロの音響機器レベルのサウンドを奏でる強者も現る
しかし、この外向き仕様は単なるこけおどしの仕様ではなく、計算された音響的な知識を駆使して作られているのも事実。サブウーファーを設置するエンクロージャー(ボックス)の容量や構造(ボックスのチューニングによって再生周波数のコントロールもしている)を、もっとも効率良く音圧を引き出すことができる設計を施している。またスピーカーを駆動するパワーアンプも十分なパワーをかけられる大出力モデルが用いられた(音圧専用のパワーアンプもある)。加えて大型のパワーアンプが消費する大量の電力を十分にまかなうため、大量のサブバッテリーも積み込まれていた。
そんな外向きマシンはどんどん進化を遂げ、低音のみならず中高音も遠くまで音を飛ばす仕様が求められれると、サブウーファーに加えてミッドレンジ(中音域を担当)、ツイーター(高音域を担当)などの中高域再生用のスピーカー群も強化。低音から高音までをバランスよく鳴らす外向き仕様も登場した。ここまで来ると外向きマシンは野外コンサートの音響機器に匹敵する性能を持つに至った。実際にPA(コンサートなどで用いるプロの音響機器)のスピーカーユニットを組み込むクルマも現れるなど、外向きオーディオは2000年以降に仕様としても性能としてもピークを迎える。
パーキングなどでの騒音問題が叫ばれるようになり音圧ブームが終焉
しかし、一方では急激に進化した音圧マシンは、あまりの音量ゆえに一般ユーザーから眉をひそめられることも多くなり、パーキングなどで大音量を鳴らして社会問題を引き起こしてしまうケースも多くなっていく。次第に音出しできるエリアに規制がかかるなど音圧マシンの締め出しも各地で始まった。そんなトラブルがあって徐々にブームも下火になり、メジャーな場所で外向きマシンを見ることも少なくなり今に至っている。
ただし、オーディオの楽しみ方は人それぞれ、大きな音を出すことを楽しむといったシンプルなオーディオスタイルは、ルールを守ってまわりに迷惑を掛けないレベルであれば許容されてもいいだろう。また音圧の競技(マイクで音圧を測定して勝敗を決めるdB競技など)もあり、単純でわかりやすく、オーディオのもうひとつの楽しみ方でもあるのだ。
地方の農村部は別にして人口密度の高い住環境の日本では、外向きオーディオを思う存分楽しめないのは確か。だが、音の大きさで一発勝負する、そんな遊び心満点のカスタムオーディオの世界も魅力的なジャンルであったと言えるのではないだろうか。