陸上自衛隊が特殊車両を大阪オートメッセに出展
国防だけではなく、災害や震災時において先頭に立って日本国を守ってくれる自衛隊。日々厳しい訓練を重ねる隊員の献身性だけでも頭の下がる思いだが、大阪オートメッセ2022には今回も装甲車を出展。第3戦車大隊の『96式装輪装甲人員輸送車』と第3特殊武器防護隊の『NBC偵察車』の2台の装甲車を前に、来場者はみな普段お目にかかることのできない究極の“カスタムカー”に見入っていた。
人員輸送を担う装甲車「96式装輪装甲人員輸送車(96式装輪装甲車)」
まず第3戦車大隊(今津駐屯地/滋賀県高島市)から来阪した『96式装輪装甲人員輸送車(別名:96式装輪装甲車、クーガー)』は、おもに人員の輸送に使われる装甲車で車内には10人ほど乗車できる。 タイヤは8輪ともコンバットタイヤを装着。これはランフラットであり、パンクしてもサイドウォールの補強ゴムの力によって、ある程度の距離を走破することができる。
ホイールを止めている10本のナットはボディと同じ塗料でペイントされており、これらは隊員自ら塗装&整備を行っているという。迷彩色のまだらな塗り分けも、(敵陣に見つからないような色味であることは言うまでもないが)ある程度自由にペイントしているという。
また、サイドに入れた赤獅子のマークは部隊ごとに決めているシンボルマークで、第3戦車大隊は『ライオン』を取り入れている(採用していない隊もある)。アラフィフ世代の筆者にとって、これを見てパッと思い浮かべたのがエリア88の主人公シンが搭乗するタイガーシャーク(ユニコーン)や、グエンが搭乗するF-105(人食い虎)だろう。
96式装輪装甲車の装備など細部をチェック
走行時は潜望鏡を覗いて運転できる装甲車は、上部に3つあるハッチから顔を出して後方を確認するという。 上部にある筒は発煙弾で、煙幕を発射して敵の照準を妨害させるそう。職業柄、カスタムカーなどの車高短やアゲ車両での下まわりの処理が気になる性分もあり、車体下を覗いてみるとさすが!! 分厚そうな鉄板で覆われ、多少の難所でも走り抜けられそうだ。 下の写真中央の文字が記載されている器具は油圧ジャッキで、車体を持ち上げる際に必要なバーは車内にあるという。
その右側は牽引フックとなり、工具や牽引用のワイヤーなどはジャッキのバーと同様に車内に備えている。 また、テールランプの上にあるふたつのカバーをめくると電源が備わる。バッテリー上がりの車両に対して電気を供給するために使用するそうだ。
特殊武器からの防護、生物剤などの検知・試料採取を主とする「NBC偵察車」
第3特殊武器防護隊(近畿2府4県の防衛警備を担任、僧駐屯地/兵庫県伊丹市)から来場した『NBC偵察車』は、化学防護車および生物偵察車の後継として装備。放射線強度の測定と有毒ガス、有毒化学剤・生物剤の検知・識別および試料採取、気象観測(風向風速等の計測)などの偵察活動を行う車両だ。
通常4名乗車で移動する偵察車の扉は、防弾板を備えており、攻撃を受ける脅威がある場合は防弾板を下げて走行して、移動時は小窓から覗く。後方確認時には(バック)モニターを活用するそうだ。さらにヘッドライト付近には、通常のライトを付けていると敵から視認されてしまうため、それを防ぐために小さなライトも備えている。
ルーフには突起から空気を取り入れている円筒状の筒があり、 リヤ側の大きな突起物は試料採取する器具となり汚染物質などを採取するそうだ。その手前にある円筒状のタンクは除染剤が入っており、汚染地域を走ったあとにタイヤまわりをキレイに(無毒化)させるものになる。
また、8輪の全タイヤの前側にノズルが備わるのも特徴で、除染剤を噴霧して走りながら除染、無毒化ができるような仕組みとなっている。リヤコンビライト部のラックには、近年クロカン4WD系のカスタムで流行りつつあるジェリカンが積載され、ここには軽油を搭載している。ちなみに想像どおりで装甲車の燃費は悪いとのこと(機密事項のため数値は非公表)だ。
なかなか間近で見る機会の少ない自衛隊車両(高速道路などではたまに見かけるが)だけに、童心に返り、外装パーツのあれやこれやに見入ってしまった。来年はまた別の車両(高機動車や二輪……戦闘機も!?)を見てみたい!!