圧倒的な走破性能×ほぼ無限の汎用性
第二次世界大戦中に開発された「ジープ」は、終戦後も悪路走破性の高いクロスカントリー4WDとして生き延び、現在でも最高スペックの1台として語り継がれています。一方、戦後にドイツで開発され、走破性とともにアタッチメントなどによる汎用性でも究極のハイスペックを持った1台として、高い評価を集めているのが「ウニモグ」です。国内では高速道路などのトンネル内壁を清掃している姿を見かけることも少なくないでしょう。今回はそんな、世界最強の「はたらくクルマ」として知られるウニモグの、歴史を振り返ってみました。
戦後ドイツの復興を支えた「はたらくクルマ」
ウニモグは、終戦直後の1946年に敗戦国のドイツで誕生しています。開発を手掛けたのは、かつて「ダイムラー・ベンツ」で航空エンジンの開発責任者を務めていたアルベルト・フリードリッヒ技師。敗戦国となったドイツでは航空機はもちろんのこと、乗用車でさえ許可なく開発することは認められていませんでしたから、フリードリッヒは農業用自動多目的装置として開発を届け出て許可を得ていました。ちなみに「ウニモグ(Unimog)」という車名は、ドイツ語の「Universal-Motor-Gerät(多目的動力装置)」の頭文字をつなげて命名されています。
プロトタイプの「U6」が完成したのは1946年のこと。このときはまだ、ダイムラー製のディーゼルエンジンが完成していなくて、暫定的にガソリンエンジンを使用していました。これをフロントアクスル後方、つまりフロントミッドシップで車両中心から右にオフセットしてエンジンを搭載し、その後方にミッションとトランスファーを配置。これに並行してセンターデフをマウントし、そこから2本のプロペラシャフトを介して前後のアクスルに駆動力を伝える基本パッケージは、現在でも大きく変わってはいません。
そして1947年にはダイムラー・ベンツの「OM636型」ディーゼル・エンジンが完成し、以後は標準装備されています。また1951年以降はダイムラーの傘下に入り、ノーズにはスリーポインテッドスターが装着され、名実ともに「ベンツ」の一員となりました。
高い走破性を生む数々のメカニズムを搭載
ウニモグの、走破性を高めるための特徴的なメカニズムとしては、「ハブリダクション」の採用があります。リジッド式サスペンションにおいては、通常ならハブの中心となるようにドライブシャフトを配置するのですが、ハブの内部にヘリカルギヤを組み込んで、ドライブシャフトからハブへの伝達において減速を行うと同時に、ハブの中心より上部にドライブシャフトを配置するもの。
ドライブシャフト位置が高まることで必然的にアクスルやデフのケーシングも搭載位置(の高さ)が上がり、最低地上高を高めることができます。またハブの内部で減速が行われるために、デフのリングギヤだけで減速するよりも減速比を下げることも可能で、ギヤを小さくできてデフケースも小型化が図れ、結果的に最低地上高をさらに高めることができています。国産ではトヨタのメガクルーザーなどに採用されています。
シャシーは、ラダーフレームの前後にリジッドアクスルをコイルスプリングで吊るスタイルですが、前後ともにリジッドアクスルのトラベルは30度と大きく確保されています。さらにラダーフレームにサブフレームを介してボディを架装していて、フレームが捩れてもボディへの捩れ入力が大きくならないような工夫も見られます。このようにして悪路でも、ときには道なき道でも走り切ってしまうほどの高い走破性が確保されています。
また前進8段・後進6段のフルシンクロメッシュ式トランスミッションを標準で装備。副変速機も3段切り替え式となっていて、都合前進24段(!)ギヤを持っているため、90km/hの高速走行から10km/h以下、人が早歩きするほどの低速での定速走行も可能になっています。