凡庸な四角いデザインでもいまだに愛されるヒットモデルとは
ファッションや家具、雑貨などに流行があるように、クルマのデザインにも時代ごとに流行があります。まだ安全基準が今ほど厳しくなかった時代には、ブロックのように四角いクルマが流行したものでした。段々と、衝突安全や燃費をよくするための空力性能などによって、丸みを帯びたデザインや低く流麗なフォルムのクルマが増えていきましたが、いまだ男女問わず「四角いクルマが好き」という人は多いですね。
一見すると、それほど凝ったデザインには見えないし、どこか商用車チックになりがちな四角いクルマですが、毎日一緒にいて眺めるうちに、なんだか愛らしく思えて愛着が湧いてくるから不思議。今回はそんな、いまだに愛されている四角いクルマたちを振り返ってみたいと思います。
ミニバンブームの火付け役「初代ステップワゴン」
1台目は、もうすぐ6代目となる新型が発売される予定のホンダ・ステップワゴンの初代モデル。日本のミニバンブームの火付け役となった1台で、1996年に登場しています。デザインはシンプルで、お道具箱の四隅ギリギリまでキャビンを広げたようなボディと、低めのボンネットのバランスが個性的。
5ナンバーサイズですが3列シートの室内も開放感いっぱいで、フルフラットになるシートを採用していました。今では見かけなくなったコラムATを採用することで、運転席から助手席へのウォークスルー、1列目から2列目へのウォークスルーが可能となり、便利な使い勝手も人気の一因に。家族のために頑張ってくれる、健気な四角いクルマでした。
少しやんちゃでも愛嬌のあるBボーイ「初代bB」
2台目は、通称出っ歯と呼ばれるエアロでカスタムしたようなフロントマスクで、今見ても“ワル”という言葉がぴたりとハマりつつも、どこか愛嬌のあるデザインが特徴的な初代トヨタbBです。2000年に登場した、広い室内が自慢のコンパクトカーは、パンツを腰で履く感じのファッションに似合いそうな印象。名前の由来はブラックボックスでした。
重低音を響かせてドライブするような音楽好きもターゲットとしており、前席はベンチシートを採用。ラゲッジも広くて、カッコだけでなく実用性が高かったことも大ヒットした理由となっています。
“軽自動車=女性”の概念を覆した男子人気の「初代ワゴンR」
3台目は、それまでは女性が乗るものという印象が強かった軽自動車に新たなジャンルを確立した、スズキの初代ワゴンR。1993年の登場で、自動車雑誌の編集者に聞いても「これが出たときの衝撃は忘れられない」と言う人は多数。「初めて軽自動車が欲しいと思った」という男性も多かったようです。
背が高く堂々とした四角いボディ、ヘッドライトも四角くて凛々しいフロントマスクが、多くの男性の心を掴んだのでしょう。この初代ワゴンRの大ヒットを受けて、他社も同様の軽自動車をリリースし、軽トールワゴンという新たなジャンルができたのでした。でもよく見ると、ぷくっと膨らんだ星のようなカタチのホイールや、間延びした感じのリヤスタイルなど、どこか愛らしさも感じます。