最低限でまとめるなら意外と安価で仕立てられる
最近は軽自動車でサーキットを走る人が急増中。パワーやサイズが適度でビギナーでも扱いやすいとか、気軽に買える普通車が減ったなど理由は色々とある。とくに大きいのは車両および維持費の安さだろう。モチロン極端に値上がりしている絶版車もあるにはあるものの、いわゆる廉価グレードや商用タイプのバンであれば、うまくいけばひとケタ万円で手に入るケースがある。
そして小排気量だけに税金はリーズナブルだし、タイヤも外径が小さく気軽に購入できる価格だ。ガンガン走って楽しむ人には最高の選択肢といっても過言ではない。ではチューニングするとなれば費用はどうか? モチロンお金が無尽蔵にあれば上限はないに等しく、200万円や300万円くらいは軽く吹き飛んでしまう。そんな極端すぎるケースはひとまず置いておき、標準的なサーキット仕様の費用を算出してみたい。
NAエンジンなら最低45万円程度あれば完璧
モデルはNAの軽自動車によるレース『東北660選手権』で、もっともベーシックで改造範囲が制限されている3クラスの場合。まず装着が義務とされているロールケージで10~15万円、車高調整式のサスペンションが10~20万円、バケットシートに4点式シートベルトで15~20万円、吸排気系にブレーキなどで10~15万円が目安だ。
タイヤやブレーキといった消耗品はまた別となるが、最安で揃ったと仮定すると45万円くらいで済み、中古パーツが見つかればさらに安く作れる。参加者に話を聞くと何もかも新品という人は非常に少なく、でき上がっているレース車両を探して買うパターンも多かった。いずれにせよNAの軽自動車なら50万円あれば、そこそこのサーキット仕様が完成すると思われる。
ちなみにECUやクロスミッションなどが使える、東北660選手権の最高峰1クラスで戦うのであれば、上記にプラスして50~70万円のコストが必要とのこと。確実にクルマ本体の金額を大きく超えるはずだが、150万円ほどでトップクラスの戦闘力が備わり、フィーリングも異次元となれば十分にアリだ。
ターボ車になればさらに15万円程度プラスしたい
続いてはアルトワークスやコペンといったターボ勢。タービンを交換したりエンジンの内部に手を加えない限り、標準的なサーキット仕様を作るコストはNAと大差ない。発熱量が大きいため冷却系の強化が必要となる場合もあるが、それでもプラス15~20万円と考えておけば十分なはず。
さらなる速さを求めるならECUやタービンも視野に入れよう。HA36アルトのパーツを多数リリースするブリッツを参考にすると、ブーストアップや各種マップを最適化した『チューニングECU』が、5万5000円とステップアップしやすい価格で販売されている。
次のメニューとしては純正と置き換えるだけの『ボルトオンターボシステム』があり、強化アクチュエーター付きのタービンキットと専用ECUで22万円(同社のECUを持っていれば18万7000円)だ。フルノーマルからココまで仕上げて工賃を含め目安は100万円~、追加メーター/サブコン類/エアロ/ブッシュやアーム類を加えて150~200万円くらい。おそらく大多数はこのあたりチューニングの終着点だろう。HA36アルトワークスの新車が約150万円だったことを考えると、フルチューンは『新車1台分』が目安になるのかもしれない。
余談だが下取りや車検をまったく考えないのであれば、ボディのフルスポット増しやエンジン内部のフルチューン、ほかにもお金をかけるメニューはいくらでも存在する。ただし車両規定で参加できないイベントは多くなるし、メンテナンスやライフの面での負担も大きいので、手を出すならばそれなりの覚悟を決めておきたい。