オーナー自ら整備して車検を通すことは旧車でも可能
それぞれの時代を反映した個性的なデザインやカラーリング、特徴的なエンジン音やプリミティブな「機械」感あふれるメカニズム。そういった、クルマごとに異なるオンリーワンの魅力にあふれているのがヒストックカーです。
憧れはあるけれど、ヒストックカーを維持するにはお金がかかるのでは? と、所有することをためらう人も少なくないでしょう。なかでも一番気になるのは、数年に1度やってくる車検整備と、その費用だと思います。
ライトやブレーキなど車検のチェック項目は旧車も新車も同じ
日本で自動車が公道を走行するには新旧問わず、「自動車検査登録制度」というのものがあります。公道を走行する自動車には、安全性の確保、公害防止という面から「点検および整備の実施」の工程が条件をクリアしているかを検査し、国の指定する保安基準を満たしているか否かを判断するのが「自動車検査登録制度」。一般的に「車検」と呼ばれていて、われわれにはそちらの方がなじみ深い呼び方ですね。
たとえばブレーキの利き方も、検査ラインの回転させたローラーに前輪と後輪を載せて検査。もちろん左右均等に利かなければいけません。パーキングブレーキも同様です。ヒストリックカーといえども、ブレーキが利いてくれなくては怖くて乗れません。とはいえ、ドラムブレーキでもしっかりコマ調整をしていれば問題ないでしょう。
排ガス規制のためのエンジン調整が一番の難関
ただ、甘くなるというわけではありませんが、マフラーから排出されるCO(一酸化炭素)とHC(炭化水素)の濃度測定に関しては、クルマが製造された年の検査基準値が適用となります。
例えば、1967年(昭和42年)に製造されたヒストリックカーの場合、COについては昭和47年以前の規制値であるアイドリング時4.5%未満。HCについては昭和50年に決まった1200ppm以下という基準値が適用されます。
それぞれの数値が基準値を上まわってしまう場合は、不完全燃焼が原因であったり、エンジン機関の経年劣化によることもあり、その基準をクリアするため、スパークプラグやエアクリーナーを新品に交換したり、少しでも良い燃焼が得られるようキャブレターの調整をしたりします。
しかし、このCOとHCの関係は、どちらかの数値を下げるよう調整するともう片方の数値が上がるという、とても厄介な性質なのです。
この数値が高くなるのは上記の理由だけでなく、エンジン内のカーボンの蓄積や、ピストンリングの磨耗といった要素も関連してきます。そのレベルになると、いずれはしっかりオーバーホールなどの処置が必要になるのですが、ショップで販売されて車検を受けている車両であれば、ほとんどの場合は問題ないでしょう。
しっかり整備しておけば「ユーザー車検」も怖くない
最近はディーラーでの不正車検が行われていたというニュースが話題になっていますが、新しくても旧くても、各部の点検内容は同じです。すべての項目を点検するには、それなりの時間がかかります。
例えば、この写真はドライブシャフトのブーツ破れですが、ベアリングのグリスが無くなると、破損の原因につながります。もちろん修理する必要があります。
自分の所有しているクルマの点検整備はオーナーの義務でありますので、自身でそれらを行うのは、問題ありません。よく、ブレーキは整備士しか触ってはいけない……と勘違いする方もいますが、自己所有のクルマでは問題のない行為です。
つまり、「ユーザー車検」についても、それに必要な整備をしっかりしておけば、あとは上記のような「ヒストリックカーあるある」に気をつければ怖くありません。
自動車整備工場や予備検査場でチェックしてもらおう
一般的な車検項目をしっかりと確認・整備したうえで、近所の自動車修理屋さんや、全国の運輸支局(車検場)の近くにある「予備検査場」という車検項目と同じ検査をしてくれる工場にて、数値での確認が必要なライトや排出ガスなどの点検項目を確認・調整してもらえばOKです。
あとは車検場の事務窓口で車検証に記された内容を記入(間違えのないように有料での代書もあり)して、自動車税の印紙を購入し貼り付け、いよいよ検査ラインに愛車を並べて、それぞれの項目を順次点検していけば、自動車税と自賠責保険(強制保険)プラス自分の手間賃だけで、車検もクリアできるのです。
普段使わない部分もたまにはしっかりチェック
そうそう、つまらないことですが、インパネ内にある各種スイッチには、その目印がなければいけません。たとえばホーンのシールが無いとダメです。バンパーの隙間も何かでカバーしなければ、巻き込みの危険があるということでアウト。そしてウォッシャー液も出ないと、それも不合格となります。普段使う機会の少ないので、意外と見逃しちゃうんですよね(笑)。
そうしたことにも気を配りながら、古いクルマだからこそしっかりと整備してあげて、ヒストリックカーライフを楽しんでみてはいかがでしょうか。