自動車メーカーの旧車に対する取り組みは欧米と比較するまだまだな日本
旧車の希少性や文化遺産価値を認め、税制優遇はもちろん、メーカーやアフターマーケットを問わず、クラシックパーツ供給や再生サービスに対応している欧米諸国。2017年ごろから国内の自動車メーカーでも純正部品の復刻が始まっているが、一部の人気車種に限定されている。部品点数も2040年までパーツを供給するとホンダが宣言したNSXを除けば、1台3万点といわれる自動車部品に対して10%にも満たず、欧米と比べるともの足りないのが現状だ。
また、修理するのではなく、部品交換対応が一般的なディーラーでは古いクルマの入庫は敬遠される場合が多く、やんわりと断られるケースも少なくない。
テュフ認証を取得し本格的にレストアを手掛けるディーラーが富山にあった
ただ、昨今の旧車ブームの影響か、ここ数年で潮目が変わりつつあり、レストア事業に手を出すディーラーが目立ち始めた。とくに目立つのが旧車マーケットで人気車種が多い日産ではなく、トヨタディーラー。先日、Auto Messe Webでも取り上げた「神奈川トヨタ」、今年2月17日に、創立80周年の記念事業として自民党衆議院議員の高市早苗さんが所有していたA70型スープラのレストアプロジェクトを発表した「奈良トヨタ(なんとレストア車両を展示する自動車博物館も所有)」など、各地でポツポツと火が付き始めている。
旧車の祭典であるノスタルジック2daysに神奈川トヨタとともに出展した「ネッツトヨタ富山」もレストア事業に力を入れるディーラーで、すでに10台弱のユーザー車を復刻。クラシックカーガレージ、板金塗装工場ともにドイツの世界的な第三者検査機関である「テュフラインランド」の認証を取得するなど、他ディーラーに先駆け、ビジネスの柱のひとつとして本格的に可動している。
レストア事業は65歳定年延長での人材の最適活用としての側面もあった
最初は、奈良トヨタや神奈川トヨタのように創立40周年記念イベントの一環であったそうだが、2008年のレストア終了以降もメディアからの取材が相次ぎ、ユーザーからの反響も大きかったそうだ。また、高年齢者雇用安定法による定年延長の就業を検討していた時期。レストアに需要があるならば、古いクルマへのスキル、技術がある元エンジンアやサービスマンにレストアエンジニアとしてその作業に従事してもらうのはどうか、という意見が社内で上がり、2012年にレストア事業を開始した。オープン前にはノウハウ、技術の習得のため、メガウェブ内のレストアピットで研修も実施。可能な限り準備は整えたそうだ。
2018年のGRガレージ富山新庄立ち上げ時に、レストア事業を移転。最新のカスタマイズとレストア作業が併設する全国でも珍しいディーラーとなっている。
青いボディの中央にホワイトのラインが走る初代チェイサーはレンタカーとして借りることもできるデモカーで、カスタマイズを施したのはオリジナルに戻すだけでなく、「こんなこともできますよ」というPRのためだという。
隣の初代セリカは2年前のノスタルジック2daysでデモカーのチェイサーを見てレストアを依頼し、1年がかりでフルレストアしたというオーナーカーだそうだ。