日産4気筒初のターボなどメカニズムもこだわりが満載
一方でメカリズムでは、フロントサスペンション(ストラット式独立)に採用された“ハイキャスターゼロスクラブ”が売りのひとつだった。これはキングピン軸の延長線とタイヤの接地中心が重なる(ゼロになる)ようにし、キャスター角を4度(それまでは2度)と大きくとったことと併せて、直進性とブレーキング時の方向安定性が増すようにしたもの。ブルーバードのスポーティ系であるSSSでは、リヤサスペンションをセミトレーリングアーム式の4輪独立とし、走行安定性、操縦安定性も高める設計になっていた。
そして910型ブルーバードで外せないのがターボ車の設定だ。日産車では1979年10月に当時のセドリック/グロリアにターボが登場したのが最初だったが、ブルーバードは車種でいえばセカンドバッターだったが(その後スカイライン、シルビア/ガゼール、レパードと続いた)、4気筒では日本車としても最初のターボ車となった。
エンジンは型式をZ18E・T型といい、省燃費、低騒音、低排出ガスを実現したZ型の1.8L(1770cc)エンジンをベースに、2L(Z20E型、120ps/17.0kgm)を大きく凌ぐ135ps/20.0kgmの性能を達成。ギヤ比の専用化などもあり、加速性能も大幅に高めることとなった。ただし、当時の省燃費の時代背景を意識し、カタログには“パワー&セーブの高性能エンジン群”“高出力、低燃費を可能にした「Z18ターボチャージャーエンジン」”“中間加速でもずば抜けた性能を見せます(40→100km/h=16.1sec〈4速時〉)”といった具合に、涙ぐましいほど遠慮がちな表現で性能をアピールしていた。
910ではワゴンやバンも用意があり、ワゴンは乗用車系がU11型にフルモデルチェンジされたあとも存続した。まだ車名ひとつひとつが大事にされ個性的だった頃の名車の中の1台だった。ただしおよそ4年というライフは、今の感覚からするといかにも短かく勿体なかった。