対処方法は安全な状況で軽くブレーキを試して身体になじませる
では、実際のところどう対処したらいいのでしょうか。これはつねに路面の滑りやすさを意識するように心がけるしかありません。ボクがおススメするのは、実際にブレーキを踏んでみること。これは後ろだけじゃなく前にもクルマがいないことが前提になりますが、圧雪路面に入ったとき、ドライ路面で行うようなイメージで軽くブレーキを踏んでみます(クルマを停止させる必要はありません)。ここでABSの介入の有無や減速感の強さを見るわけです。
グイッと強めの減速Gが出る場合も、あっさりABSが介入してしまう場合も、もう一度今度は少し長めにブレーキをかけ路面のグリップの様子を身体に刷り込むように心がけます。イメージとしては、ブレーキを踏んで路面の滑りやすさを確認しながら、速度感や操作を雪道モードに修正する感じです。これは4WD車に限らず雪道に入ったときの基本動作なんですが、イージーに加速できる4WDではなおさら雪道でのブレーキ利き具合のチェックが大切だと思います。
雪道ではハンドル修正が強いられるきっかけ作りのハンドリングはNG
もうひとつは、4WDのコーナリングについても触れておきましょう。雪道を走るときボクが注意しているのはカーブでのハンドルの切り方です。4WDの場合、滑りやすい路面ではクルマのパワーを4輪に分散できるので、アクセル操作に対してクルマの姿勢が乱れにくいのが特徴です。同じパワーの2WDと4WDを比べた場合、4WDは多少のアクセル操作であればクルマの姿勢を乱しにくく、安定したコーナリングができます。
ただし、4WDは曲がりやすいと思われているのですが、じつは曲がり始めは逆に曲がりにくい傾向にあります。もちろんタイヤやクルマ次第のところもあるのですが、それは直線を安定して走っている4WDは不安定になりにくいということでもあります。
そのため4WDの運転に慣れてくるとどうしてもハンドル操作が雑になりがちです。まずハンドルを多めに切ってクルマが曲がり出すきっかけを作り、クルマの動きを見てからハンドルを修正する“リアクションの運転操作”をしてしまいがちです。
場合によっては、このような“探る”ハンドル操作はアリですが、無意識の操作はNGです。人は曲がらないとか曲がりにくいと感じると、反射的にハンドルを切り足してしまいます。じつは雪道ではこの操作はたいていの場合、悪手になります。
クルマが曲がらないときはブレーキかけて減速することに限る
理由はタイヤが本来持っている曲がる力を発揮する前にハンドル切り足してしまうと、タイヤが曲がる力を発揮する舵角(適正なスリップアングル)を超えてしまうのです。クルマが曲がらないと感じたとき、ブレーキを踏んで減速すれば危険な状況にはなりませんが、アクセルを踏んで強引に曲がろうとすると、大抵の場合はフロントタイヤの滑りを増長させる結果になって、さらに曲がりにくくなってしまいます。
4WDはフロントタイヤのグリップがとても重要になります。FR車ならプッシュアンダーやリヤのスライドでアクセルが踏めなくなるし、FF車もハンドルの手応えが極端になくなるのでわかりやすいです。しかし、4WDは4つのタイヤに駆動力がかかっていることもあって、前輪が横滑りを起こしたときに、正しい選択肢は減速しなかないのに、アクセル操作でリカバリーできる軽微なものと錯覚しやすいのです。
4WDは前後輪の滑りに関してわかりにくい分、とくに慎重になる必要があります。全体的に言えば雪道での4WDは圧倒的にトラクション性能に優れ、安定性が高いので頼もしく心強いのですが、雪道を走っている状況は変わらないので、クルマの性能に頼り過ぎないことこそが大切なんです。