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雪道でもグイグイ加速する4WDが生む勘違い! 事故を招く落とし穴とは

フォレスターのスノードライブ

走破性の高さが逆に危険と隣り合わせになる雪道ドライブの極意とは

 4WDに乗ると、それまでツルツルと滑りやすかった道があっけないほど楽々と走れるようになります。「4WDは最強!」と、4WDさえあればどこにだって行くことができる気がするもの。冬道ではことさら頼もしい4WDですが、だからこそ注意しなくてはいけない落とし穴があるのです。それがブレーキです。

普通に走れてしまうからこそ注意したいポイントとは

 わりと多くの人が誤解しているのですが、4WDが優れているのはトラクション性能(=駆動力)です。4つのタイヤに駆動力が分散できるため、FF車、FR車などの2輪駆動のクルマと比べると倍近い駆動力が得られるのです。けれどもブレーキは駆動方式に関係なく4つのタイヤにかかりますから、駆動方式の差はほとんどありません。

 2輪駆動車だと発進するときから慎重にアクセルを踏み込み、ホイールスピンが起こらないように運転します。最近ではほとんどのクルマにトラクションコントロールや横滑り防止装置が装備されているので、クルマのほうでタイヤの空転を抑えてくれます。

 ですから滑りやすい交差点からの発進でも、ひと昔前よりもずっと楽になりました。とはいっても2輪駆動だと加速はかなり緩慢になり、そのため嫌でも路面の滑りやすさを意識させられます。ところが4WDだと、そんな滑りやすい路面でもわりとイージーに走り出すことが可能に。そのため路面の滑りやすさに対して、どうしても意識が薄くなりやすいのです。

わずかな車速の違いでも雪上路では速度を抑えることが鉄則

 ちなみに速度(車速)が倍になると、制動距離は約4倍 (運動エネルギーは速度の倍数の2乗に比例する)になります。例えば、20km/hで制動距離が15mになる凍結路面の場合、速度が倍の40km/hになると制動距離は計算上60mになります。ではこんなケースはどうでしょう。速度が1.2倍になったら制動距離は?

 答えは、1.2倍の2乗なので1.2²=1.44倍になるわけです。速度20km/h時の制動距離が15mの凍結路だとすると、2割速い24km/h時の制動距離は15m×1.44=21.6mとなります。誤差のような速度差なのに制動距離は約10mも長くなってしまうのです。

 これはあくまでもドライ路面を想定した計算上の話で、リアルワールドではもう少し制動距離は短くなるだろうし、そもそも路面状態によって制動距離は大きく変わりますから、この数字はあくまでも参考でしかありません。ただ、ウエット路面や雪道などの滑りやすい路面では制動距離が、ほんの少しの車速の違いでもさらに大きく変わってしまうのがわかると思います。

 ちなみに、あくまでも参考値ではありますが、日本自動車タイヤ協会の資料によるとドライ路面の制動距離と比較して雪上の圧雪路で3.2倍、凍結路で5.4倍にそれぞれ制動距離が伸びるというデータがあります。つまり、滑りやすい路面でも簡単に発進でき車速を乗せることができる4WDは、ことさら車速に注意深くなる必要があるということです。

対処方法は安全な状況で軽くブレーキを試して身体になじませる

 では、実際のところどう対処したらいいのでしょうか。これはつねに路面の滑りやすさを意識するように心がけるしかありません。ボクがおススメするのは、実際にブレーキを踏んでみること。これは後ろだけじゃなく前にもクルマがいないことが前提になりますが、圧雪路面に入ったとき、ドライ路面で行うようなイメージで軽くブレーキを踏んでみます(クルマを停止させる必要はありません)。ここでABSの介入の有無や減速感の強さを見るわけです。

 グイッと強めの減速Gが出る場合も、あっさりABSが介入してしまう場合も、もう一度今度は少し長めにブレーキをかけ路面のグリップの様子を身体に刷り込むように心がけます。イメージとしては、ブレーキを踏んで路面の滑りやすさを確認しながら、速度感や操作を雪道モードに修正する感じです。これは4WD車に限らず雪道に入ったときの基本動作なんですが、イージーに加速できる4WDではなおさら雪道でのブレーキ利き具合のチェックが大切だと思います。

雪道ではハンドル修正が強いられるきっかけ作りのハンドリングはNG

 もうひとつは、4WDのコーナリングについても触れておきましょう。雪道を走るときボクが注意しているのはカーブでのハンドルの切り方です。4WDの場合、滑りやすい路面ではクルマのパワーを4輪に分散できるので、アクセル操作に対してクルマの姿勢が乱れにくいのが特徴です。同じパワーの2WDと4WDを比べた場合、4WDは多少のアクセル操作であればクルマの姿勢を乱しにくく、安定したコーナリングができます。

 ただし、4WDは曲がりやすいと思われているのですが、じつは曲がり始めは逆に曲がりにくい傾向にあります。もちろんタイヤやクルマ次第のところもあるのですが、それは直線を安定して走っている4WDは不安定になりにくいということでもあります。

 そのため4WDの運転に慣れてくるとどうしてもハンドル操作が雑になりがちです。まずハンドルを多めに切ってクルマが曲がり出すきっかけを作り、クルマの動きを見てからハンドルを修正する“リアクションの運転操作”をしてしまいがちです。

 場合によっては、このような“探る”ハンドル操作はアリですが、無意識の操作はNGです。人は曲がらないとか曲がりにくいと感じると、反射的にハンドルを切り足してしまいます。じつは雪道ではこの操作はたいていの場合、悪手になります。

クルマが曲がらないときはブレーキかけて減速することに限る

 理由はタイヤが本来持っている曲がる力を発揮する前にハンドル切り足してしまうと、タイヤが曲がる力を発揮する舵角(適正なスリップアングル)を超えてしまうのです。クルマが曲がらないと感じたとき、ブレーキを踏んで減速すれば危険な状況にはなりませんが、アクセルを踏んで強引に曲がろうとすると、大抵の場合はフロントタイヤの滑りを増長させる結果になって、さらに曲がりにくくなってしまいます。

 4WDはフロントタイヤのグリップがとても重要になります。FR車ならプッシュアンダーやリヤのスライドでアクセルが踏めなくなるし、FF車もハンドルの手応えが極端になくなるのでわかりやすいです。しかし、4WDは4つのタイヤに駆動力がかかっていることもあって、前輪が横滑りを起こしたときに、正しい選択肢は減速しなかないのに、アクセル操作でリカバリーできる軽微なものと錯覚しやすいのです。

 4WDは前後輪の滑りに関してわかりにくい分、とくに慎重になる必要があります。全体的に言えば雪道での4WDは圧倒的にトラクション性能に優れ、安定性が高いので頼もしく心強いのですが、雪道を走っている状況は変わらないので、クルマの性能に頼り過ぎないことこそが大切なんです。

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