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シートベルトもヘッドレストもないけど旧車は違反にならない! 日本の安全装備の歴史が意外と浅かった

シートベルトもヘッドライトもないクラシックカーってよく見るけど……?

 旧車が大挙して集っているイベントに行き、自動車趣味人の方々が愛用している往年の名車を拝見すると、衝突時や急減速時に乗員を保護する「シートベルト」や、頭部後傾抑止装置とも呼ばれる「ヘッドレスト」がないクルマが多々あることに気づく。そのままの状態で乗っているということは、シートベルトの着用義務違反になったり、車検時に不合格になったりしないということだ。

※写真はすべてイメージです。

法律で義務化される前のクルマはなくてもOK

 そう、道路運送車両の保安基準は、その自動車が販売された当時の法律に則るため、シートベルトやヘッドレストが元々ないクルマは、後付けしなくても大丈夫なのである。シートベルトやヘッドレストがないクルマで走っていると、若手の警察官から停車するように求められることがたまにあるそうだが、万事オーケーなのだ。

 そのようなルールなので、これまで漠然と「へぇ~、シートベルトやヘッドレストが元々ない旧いクルマは後付けしなくても大丈夫なのね」と思ってきたが、筆者が愛用している「アルファロメオGT1600ジュニア」は1974年式でシートベルトもヘッドレストも装備しているので、先日、ふと、シートベルトやヘッドレストの有無って、年式でいうといつが境目なんだ? と、頭のなかに大きなクエスチョンマークが現れてしまった。ということで調べてみたら、こういうことだった。

運転席のシートベルト「設置」義務化は1969年から

 日本でシートベルトとヘッドレストが義務づけられたのは1969年のことだ。その年の4月1日以降、国内で生産された普通乗用車は、運転席のみシートベルトとヘッドレストを装備するようになった。助手席のシートベルトとヘッドレストは1973年12月1日から、後部座席のシートベルトは1975年4月1日から設置することが義務づけられている。

 わがアルファロメオはイタリア車だが、既述したように1974年式なので、シートベルトもヘッドレストも装備しているのだ。「伊藤忠オート」のディーラー車なので、装備する必要があったということなのだろう。

 往時は腰の部分のみに着用する2点式シートベルトが主流だったが、1975年以降、フロントの座席に関しては3点式シートベルトが設置されるようになった。3点式シートベルトは、1959年に「ボルボPV544」に初めて採用されたもので、同社のエンジニアであるニルス・ボーリンが開発した安全装備だ。ボルボは世界中の誰もがこの技術の恩恵を得られるように特許を無償公開し、それ以来、数多くの人々が3点式シートベルトに救われている。ちなみに、ピラーがないオープンカーなどは2点式シートベルトの設置が認められていたが、1987年3月1日以降はその例外もなくなった。

シートベルトの「着用」義務化は段階的に進んできた

 シートベルトの着用義務が発生したのは1971年のことだが、このときは運転席および助手席での着用が「努力義務」として課されただけだった。道路交通法によって着用が本格的に義務化されたのは1985年9月1日のことで、高速道路や自動車専用道において運転席と助手席ではシートベルトをすることが罰則付きで義務づけられた。運転席と助手席のシートベルトを一般道でも着用することが義務化されたのは1992年11月1日のことだ。

 2005年9月1日から乗用車の運転席でシートベルトを着用せずに走り出すと警告音が鳴るようにすることが義務づけられ、道路交通法が改正された2008年6月1日から、運転席や助手席だけでなく、後部座席の乗員もシートベルトを着用することが義務となった。後部中央座席に3点式シートベルトを設置することが義務化されたのは、2012年7月1日のことだ。

シートベルトのおかげで命びろいした経験

 筆者は、以前、カメラマンさんが愛用しているフォルクスワーゲン・ビートルの助手席で正面衝突事故に遭い、救急車で運ばれたことがあるが、その際にシートベルトを着用していたので無事に生還することができた。ビートルのフロントセクションがすっかりつぶれてしまい、残念ながら廃車に。筆者がダッシュボードに側頭部をぶつけ、裂傷で出血するほどのもらい事故だった。シートベルトを着用していなかったら、おそらく早逝していたので、この原稿を書くことはなかったであろう。

 シートベルトやヘッドレストが元々ないクルマを愛用している方々は、本当に気をつけて運転してほしい。筆者もアルファロメオGT1600ジュニアでの安全運転をこれからも続けたいと思う。

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