メーカーによって呼び方が異なるDOHCとツインカムとは
ツインカムとDOHC(ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフト)は、メーカーによって呼び方こそ異なるが、これはほぼ同義である。ちなみにどちらもエンジンの構造を表し、ひとつのエンジンのシリンダー(燃焼室)上に何本のカムシャフトがあるのかを示す用語である。
かつては高性能エンジンの証として、エンブレムの横やボディサイドにステッカーが貼られていたことを覚えている方も多いだろう。それこそ自動車雑誌では「ターボとDOHCのどちらがチューニングに向いているか」や「どちらが高性能なのか」といった記事が人気を集めていた。しかし、現在では高性能なDOHCエンジン+ターボが当たり前の時代となり、話題終了となるのである。
昔は同じような機構でもメーカーによって呼び方が異なる場合が多く、ツインカムとDOHCに限らず、例えば4WD(FOUR WHEEL DRIVE)をAWD(ALL WHEEL DRIVE)と称するぐらいの違いと考えてもらえばいいだろう。
エンジンの進化過程でSV→OHV→OHCへと発展
ここで10秒でわかるカムシャフトやバルブの歴史について少し解説してみよう。昔はエンジンの横や下にあったSV(サイドバルブ)という方式がエンジンの主流だったが、その後、現在でもシボレー・コルベットが搭載するカムシャフトがエンジンブロック側で、バルブが頭の上にあるOHV(オーバー・ヘッド・バルブ)が誕生する。
そしてカムシャフトが一番上にあるOHC(オーバー・ヘッド・カムシャフト)、もしくはSOHC(シングル・オーバー・ヘッド・カムシャフト)が生まれ、さらに発展型のツインカムやDOHCへとつながるワケだ。
DOHCが高性能エンジンとされるのはより高効率を実現するため
そこで現在主流のDOHCエンジンは「何がすごいのか?」であるが、吸気・排気バルブのそれぞれの面積を広げることで、シリンダー内に沢山の空気を取り入れることが可能になり、出力(パワー)を高められるようになるのが大きな特徴だ。いまいちピンときていないようであれば、ひとつのシリンダーにインテーク(吸気)バルブがひとつ、エキゾースト(排気バルブ)がひとつのSOHCと、それがそれぞれふたつのDOHCとでは、どちらがより多くの空気が取り込めて効率がいいかという話になる。もちろんDOHCの方が高効率のためパワーを引き上げることができるようになる。
そのため1気筒(シリンダ−)あたりにバルブを4つ設けたとしたら、吸気に2バルブ、排気に2バルブあった方が当然効率が高く、吸気用と排気用にそれぞれ2本のカムシャフトを備えることで、より緻密な制御ができるようになり高性能化できるワケだ。もちろん吸入空気量を増やす機構としては、効果の違いこそあれターボチャージャーやスーパーチャージャーも同じ効果を狙ったものになる。
V型や水平対向エンジンのDOHCはツインカムとはイコールにならない
ここでツインカムとDOHCの重箱の隅をつついたような違いに触れると、ツインカムはエンジンに何本のカムシャフトがあるかを示している用語なので、直列エンジンであれば8気筒でも12気筒でも2本だからツインカム(以下、DOHCに統一)。
対してV8エンジンであれば片側(片バンク)2本ずつだから、4本必要でフォーカムとなる。かつてはカタログに4カムと表記したV6エンジン搭載車もあったが、実際には1気筒あたりのカムシャフトは2本なので間違いではないのだが、現在は誤解を招くことがないようにDOHCという表記が一般的となっている。