1気筒5バルブのエンジンもあったが現在は1気筒4バルブが主流
かつては直4エンジンのDOHC8バルブやSOHC8バルブ、1気筒あたり5バルブのDOHC20バルブといったエンジンもあった。これらはコストと性能のバランスの追及や差別化が重要視されていたワケだが、現在はほとんど見かけることはなく、1気筒あたり4バルブのDOHCが基本となっている。
これはバルブの開閉面積だけではなくて、開閉タイミングも綿密に制御しないと緻密な燃焼ができず、出力はもちろん排ガス浄化性能や燃費に関わることから、現在は2本のカムシャフトのDOHCが主流となっているのだろう。もちろん量産効果でコストも下がったに違いない。
日本車初のDOHCエンジンはホンダT360に搭載の「AK250E型」
少々昔の変わり種を紹介すると、例えばトヨタのハイメカツインカムは、1本のカムシャフトを従来どおりタイミングベルトで駆動して、もう1本のカムシャフトをカムシャフト間にシザーズギヤ駆動機構を設けることで実現したもの。その結果、最適燃焼室形状、高圧縮比、4バルブ化と開閉タイミングの効率化を図ることができ、低コストかつ高性能を両立。このバランスのいいエンジンは、高性能ではない乗用車のエンジンにもDOHCを採用させることになるなど、DOHCの民主化(?)を果たしたエンジンであった。
ちなみに日本車初のDOHCエンジンはどのモデルに搭載されたのかわかるだろうか? 1967年にデビューしたトヨタの歴史的スーパーカーである2000GTも早々に高性能エンジン(3M型・2L直6DOHC)としてDOHCを採用したが、じつは意外なことに1963年8月発売のホンダ初のトラックであるT360に搭載されたAK250E型・354cc直4DOHCが日本車初のDOHCエンジンとなる。
ホンダ自慢のDOHC VTECは2代目インテグラXSiで初採用
そのホンダと言えば、高性能DOHCのイメージリーダーといっても過言ではないVTEC(Variable valve Timing and lift Electronic Control system/バリアブルバルブ・タイミングアンドリフト・エレクトロニック・コントロールシステム)がある。可変バルブタイミング機構を備えたVTECは、低回転と高回転でバルブ開閉のタイミング(リフト量)を変更。エンジン回転数に応じて適切なバルブ開閉ができることから、エンジンの特性を可変させることで、高性能かつ実用的なエンジンの両立と低燃費化を実現した。2代目インテグラのXSiグレードに搭載のB16A型から始まり、VTECは一世を風靡。その後、三菱のMIVECなど、ライバルたちも負けずと開発競争を繰り広げいち時代を築くこととなる。
これは余談だが、コルベットがいまだOHVを使っているのは、ひとえにエンジンの重心を低くできるからだ。ドライサンプ式にするなどの改良が加えられ、ミッドシップとなった現行型もアメリカを代表するリアルスポーツカーとして人気であることはご存じの通り。かつて北米に存在した「OHV only」というOHVエンジンしか整備できないという整備工場が現在どれだけ残っているのかは不明だが、「OHVこそアメリカのエンジンだ!」という気風もあっていまだOHV一択なのだろう。
いずれにせよ必要な性能が出れば形は何でもよく、現在の1気筒あたり4バルブのDOHCというのは、需要と供給の結果というワケだ。