サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

溝たっぷりの新品状態はダメだった! カンナで削る強者もいる「サーキットベスト」のタイヤの状態とは

タイヤのイメージ

公道とサーキットで“ベストな条件”は少々異なる

 軽自動車であっても本格的なレーシングカーであっても、エンジンのパワーを最終的に路面へ伝えるのはタイヤ。どんなハイグリップでも経年劣化は避けられず、主成分であるゴムが硬くなって性能が落ちる、なんて話はあらためて説明するまでもないだろう。

 しかしモータースポーツの世界はよりシビアで、F1やスーパーGTのようなカテゴリーでは、予選の最速タイムを出すチャンスは1周だけ。つまりタイヤが性能をフルに発揮するのは、非常に短いというのが常識になっているのだ。

 確かにレースは『タイヤ戦争』なんて言葉も聞くように、選び方も使い方も相当にシビアであることは間違いない。その常識は一般ユーザーが当たり前に購入できる、市販ラジアルタイヤも同じなのか考えてみよう。

熱が入りすぎると本来のグリップ力を発揮できないことも

 街乗りであればサイドウォールに記載された製造年月が極端に古くなく、かつスリップサインが出るほど摩耗していなければ問題はない。ただしサーキット走行がメインとなれば別だ。

 完全なレース用のスリックタイヤほどシビアに考える必要はないが、タイヤの状態でドライバーのフィーリングもタイムも大きく変わってくる。よく耳にするのは「新品はダメ」という話。交換したら最初に皮むきすることは当たり前として、ココでいう『新品』とはまったく減っていない状態、すなわちブロックが高すぎて剛性が低いことを指す。ウエット路面における排水性を無視して考えれば、タイヤのブロックは低ければ低いほど変形しにくく、フィーリングも良ければタイム的にも有利に働く。

 ならば摩耗した中古タイヤのほうがタイムは出るのだろうか。それはまた違う話で、ちょっとした摩擦による発熱なら冷やせばほぼ回復するが、俗に『ブロー』と呼ばれるコンパウンドが熱で大きく劣化してしまうと、温度が下がったからといって当初のグリップ力はとても期待できない。

カンナで削るという荒業も……

 とはいえ街乗りで熱を極端に入れず減らすのは、時間と距離を考えればあまりにも非現実的。そこで生まれたのが新品タイヤを『削る』という手段だ。駆動輪をジャッキアップしてギヤを入れてタイヤを回転させ、そこにカンナなどを当て温度を上げすぎないよう注意しつつ、ブロックをベストと思われる高さまで削り落としていく。

 車種やコースによって違うので一概にはいえないものの、新品と削ったタイヤでは1周につき1秒差なんてのもザラ。想定される路面コンディションに合わせて、タイヤを何パターンか『作る』ケースもある。公認レースではタイヤの加工は等しく禁止されているが、以前は加工と自然な摩耗の判別が難しいこともあり、グレーゾーンとして半ば黙認されていた部分もあった。

 だが近年は参戦コストの引き下げなどの理由から、決勝レースは新品タイヤしか使用できないなど、レギュレーションが改定された例もあるという。そうした決まりごとがなければタイヤの加工は自由だし、最終奥義といえるほどタイムアップするのも事実だが、その恩恵を受けられるのはごく一部の上級者だけ。大半はタイヤを削るよりガンガン走り込んだほうが、よほどタイムアップするし腕も磨けるはずだ。

モバイルバージョンを終了