無駄な要素は一切ない質実剛健なエクステリア
クルマとしては、今のようにLEDのシグネチャーランプのデザインに凝る……といった時代ではなかったから、まるごと質実剛健なクルマだった。外観にしてもメッキのパーツはフロントグリルとスリーポインテッドスターのオーナメント、グレードを表わすバッジ程度。驚くほど簡素なくらいだった。が、「最善か無か」のメルセデス・ベンツのフィロソフィに基づいて形のあるものにはすべて理由、機能があった。
有名なところでは凹凸を設けて、一面に汚れを付きにくくすることで視認性を確保したテールランプレンズ、左右非対称で最適な視野を確保したドアミラー、ウインドウシールドの86%を払拭するように独特の動きをする1本ワイパーなどがそう。
上質な作りこみが光るインテリア
インテリアでは運転席からスイッチ操作で倒せる後席ヘッドレストや、操作性のいいダイヤル式空調スイッチ、「イス型」のパワーシートスイッチなど。またシートには体温による湿気を効果的に吸収する発泡パッドを内蔵したシートクッションを採用。座ると座面が体重に応じてたわみながら身体を支えてくれて、このころのメルセデス・ベンツのシートの座り心地がよかった……そう思う人は少なくないはずだ。
サスペンションはフロントがストラット、リヤがマルチリンク。アンチノーズダイブ、アンチスクォットジオメトリーの採用で、ストローク感のある、独特のフラットライドを実現していた。
ポルシェが開発に関わったスーパーサルーン「500E」
そしてボディタイプが豊富に用意されていたのも特徴だった。基本のセダン(W124)をはじめ、ステーションワゴン(S124)、クーペ(C124)そしてカブリオレ(A124)があった。ステーションワゴンはサードシートを備え、クーペは今ではかえって新鮮だが、セダンと同じデザインのフロントグリルを備えていた。
それともう1台、「高性能スポーツカーの走りと高級サルーンの快適さを両立」させたのが「500E」だった。開発・生産にポルシェが関わったというこのモデルは、4973ccのV8・DOHC 32バルブエンジンを搭載。吸気側にバリアブル・バルブタイミング機構などを採用し、最高出力325ps/5600rpm、最大トルク49.0kg・m/3900rpmを発揮した。V8エンジン搭載のためにフロントフェンダーがさり気なく拡幅された、通が思いを寄せるモデルだった。