もはや伝説級の人気を誇る新型「ランクル300」
圧倒的なパワー&トルクを誇るエンジン、そこかから生み出される豪快な走りと余裕のクルージング性能。そして世界屈指のオフロード性能……。昨年夏に発売された新型トヨタ・ランドクルーザー「300」は、すでに伝説的な存在だ。それを裏付けるのが納車待ちの長さ。4年とも5年とも言われているが、トヨタ関係者にうかがってみても、それはどうやら事実らしい。コロナ禍、戦禍などによる世界の経済情勢も理由にあるだろうが、それにしても……長すぎる……。メーカーでは納車後1年以内の転売を禁じる措置もとっているから、つまり、転売屋ではなく、本当にランドクルーザーが欲しい人々がそれだけいる、ということだ。
悪路の走破性だけでなくユーティリティの高さにも注目
その人気の理由のひとつには、昨今のSUVブームもあるだろう。アウトドア・トランスポーターとしてのユーティリティの高さ、また悪路での走りの安心感などにより、新型車はもとより中古車でもバツグンの引き合いの強さを見せている。だが、ランドクルーザー、それもフラッグシップの新型「300」ともなれば、いわばSUVの頂点を極めるクルマ。憧れるユーザーも多いわけだ。
しかし今回、ここで考えてみたいのは、オフローダーとしてのランクル300ではなく、アウトドアSUVとしてのランクル300だ。実際、アウトドアに出かけてみるとして、どんなユーティリティを見せてくれるか?
ビッグサイズゆえの室内空間はさらに広く進化
まずアドバンテージは、そのボディサイズ。都内の路地裏や狭い山道では扱いにくいとの声もあるが、フルサイズボディとはいえ、見切りのよさとハンドルの切れ角の大きさで、歴代ランクルは意外とそんな場所を苦にしない。それより、そのボディサイズゆえの室内スペースの広さに注目だ。
たとえば乗車スペース。フロント着座位置や、セカンド&サードシートの構造や配置を見直すことにより、先代のランクル200シリーズよりだいぶ広く感じる(ちなみにボディサイズ自体は200も300も同サイズだ)。
もちろん、同時にラゲッジルームもかなり大きくなった。セカンドシートを使った5人乗車時でも、ちゃんと5人分のゴルフバッグ(9.5インチ)を積めるようになったのだ! これは4人分でとどまっていた200シリーズから大きな進化を遂げた部分。
3列目シートをフラットに収納できるのが嬉しい
ポイントは、床下収納式になったサードシートの構造。200シリーズのサードシートは左右跳ね上げ収納式で、畳んだ状態でもかなり積載スペースを犠牲にしていたのだが、300シリーズはスペースをフル活用。しかもフロアはフラットでスクエア、タイヤハウスの出っ張りもほとんどジャマにならないので、ボックス型の荷物を整然と積むことができる。
おまけに上級グレード車となると、サードシートの格納も復帰もスイッチひとつでOK。これは荷物量の多いとき、かなり便利に使えるのだ。またサードは5対5の分割格納式なので、荷物量と乗車人数に合わせて使える、これもアドバンテージだろう。200シリーズも300シリーズも、サードシートのあるなしで5人乗り/7人乗りが選べるのだが、200シリーズ時代は積載重視なら5人乗りを勧めるしかなかった。しかし300シリーズは積載重視でも、7人乗りをどうぞ選んでください、と言い切れるほどだ。
2列目シートは畳むもよし跳ね上げるもよし
そしてセカンドシートも、マルチな機能がたっぷりだ。背もたれは3分割式で、たとえばセンター部のみを畳めばスキー板やボード系の長さのあるギアもすんなり積載。もちろん荷物量と乗車人数に合わせてアレンジすることもできる。
ちなみにセカンドの背もたれを倒したとき、ラゲッジルームは奥行き1865mmを確保。つまり車中泊するときも、たいていの人は足を伸ばして寝られそうだ。ただしセカンドの背もたれとフロアに10cmくらいの段差ができてしまうので、ここはユーザー自身の工夫が必要になってくる。
さらにセカンドシートは座面を跳ね上げて畳むことも可能(タンブル機能)。そうすると最大で奥行き1800mm、幅1300mmあまりのスペースが出現するので、オトナふたり+子どもひとりくらいは楽に寝られそう。荷物も、シングルベッドのマットが3枚くらいは収納できそうだ。
便利機能とオプションも勢ぞろい
そのほかユーティリティとして、豊富なポケッテリア(収納スペース)や、上級車ではハンズフリーバックドア(スマートキーを携帯していればリヤバンパーの下に足を出し入れするだけでバックドアが自動開閉する)なども充実。オプションのルーフレールやラゲージマット、ハンギングベルトブラックなどを選べば、さらにSUVとしての機能をグレードアップできる。そう、走りのパフォーマンスだけでなく、ユーティリティ面でもランドクルーザー300は超優等生と言えるのだ。
ただウイークポイントは、フロアの高さゆえの積載時の大変さ(大型犬でもジャンプして乗り込むのは大変そう)と、WLTCモード7.9km/L(ガソリン)&9.7km/L(ディーゼル)という燃費。とくに燃費は今の時代、ちょっとツラい? もちろん、そこさえ納得すれば、かなり高い満足感は確実に得られるのは間違いない。ランドクルーザーのプライドは、こんな面でもしっかり伝統として受け継がれているのだ。