かつては鉄製でボディ別体のバンパーが一般的だった
クルマのボディを衝突から守る目的で装着されているバンパーは、今でこそ樹脂製が主流となり、安全基準や空力特性を考えてボディと一体化しているものがほとんど。だが、1980年代の前半ぐらいまではバンパーの素材といえば「鉄」だった。
北米では安全基準に基づいて造られた大きな「5マイルバンパー」を1970年代から採用するようになる。たとえば「シボレー・コルベット」(3代目/C3型)は、車体の前後にアイアンバンパーを持つ仕様が1972年式までだったりするが、国産車に関しては1980年代前半ぐらいまで鉄製バンパーが生き延びたわけである。
昔の欧州ではバンパーはガンガンぶつけるものだった
往時のイタリアやフランスでは、縦列駐車状態から発進する際に前後のクルマに自車の鉄製バンパーをガンガンぶつけ、隙間を拡げてから悠々と出ていっていたようだ。しかし、樹脂製バンパーが主流になってからはさすがにそれも難しくなり、ここ最近はアグレッシブな「バンパーガンガン」は行われていないようだ。
とはいえ、筆者がサッカーの中田英寿選手を応援するためにイタリアのペルージャに行った際、街なかで見かけたクラシック・ミニの前後にはカンガルー・バーのような巨大な鉄製バンパーが付いていたので、もしかしたら郊外のほうではまだ「バンパーガンガン」をやっているのかもしれない。
バンパーもクルマのデザインにおける大事な要素に
鉄製バンパーは強固なので、多少の衝突であれば傷がつく程度で変形しなかったり、変形したとしても容易に修復することが可能だった。そのため一時代を築いたわけだが、興隆の過程で単なる緩衝装置から、デザイン上の個性を表現するパーツへと変貌していった。
具体的に説明すると、当初は水平方向にまっすぐ伸びたシンプル形状のものが一般的だったが、その後、鉄製バンパー自体にも抑揚がつけられたりするようになり、次第に高級化が進んでいったのだ。