ノンターボモデルに2年先駆けて新型に移行したターボモデル
Can-Amでライバルを圧倒し、2年連続チャンピオンに輝いた1973年の9月に行われたフランクフルトショーで、ポルシェ911にターボエンジンを搭載したプロトタイプが出展されています。翌1974年のパリ・サロンで生産モデルが披露され、さらに翌1975年の春から市販が開始されています。ポルシェのロードモデルとしては初のターボエンジン搭載車となりました。
スペックを分析してみると、前年に登場したカレラRS 3.0と共用した2993ccのシングルカムフラット6エンジンに、KKK製のターボを装着しているのがわかります。パフォーマンス的には最高出力が、RS 3.0の230psから260psに引き上げられていました。
タイヤも、当初は185/70VR15と215/60VR15でしたが、すぐに205/50VR15と225/50VR15に、さらに1年後には205/55VR16と225/50VR16へとサイズアップされていました。当然のようにトレッドもRS 3.0の1369mm/1380mmから1438mm/1511mmへと拡幅されています。太いタイヤをカバーするためにオーバーフェンダーも拡幅された結果、全幅もRS 3.0の1652mmから1775mmまで拡大されていました。
見逃せないのは、そのカレラも含めてノンターボのシリーズがまだ初代モデルの901型だったにもかかわらず、ターボモデルは新型の930型に移行していたこと。ノンターボモデルも1974年からはビッグバンパーが装着され1975年に販売が開始されるターボモデルと同じルックスにブラッシュアップされていましたが、1977年までは901型が継続生産されていました。
レースでも活躍した930型911ターボ
純レーシングモデルだけでなくロードゴーイングの市販モデルでのレースも精力的に行ってきたポルシェの歴史に反することなく、930型911ターボもレースに参戦することになります。かつて917が隆盛を誇っていた世界メーカー選手権は、1976年からは市販車をベースとしたグループ5、いわゆるシルエットフォーミュラが主役となることが決定していました。また各地ではGTカーレースが盛んに行われていました。
当然ポルシェは、世界メーカー選手権に参戦するシルエットフォーミュラと、各地のGT選手権に向けて2種類のレーシングカーを開発することになりました。こうして誕生したモデルが935と934。930をベースとしたグループ5が935で、グループ4が934。ワークスチームやサテライトチームが世界メーカー選手権を戦うためのレーシングカーが935で、プライベートチームに市販するレーシングカーが934という訳です。
もっとも934もメーカー選手権のグループ4クラスで活躍するのはワークス系サテライトチームというケースも少なくありませんでした。例えばグループ5による世界メーカー選手権が始まった1976年シーズンは7戦5勝で、また翌1977年シーズンは9戦8勝で、2年連続して935がシリーズを制してポルシェがマニュファクチャラーチャンピオンに輝きました。
シリーズから外れて単独イベントとなった1977年のル・マン24時間では、グループ5クラスをC.バロ-レナ組の935が制し総合でも3位、グループ4クラスはボブ・ウォレク組の934が制しただけでなく、総合優勝をユルゲン・バルト組のポルシェ936が制すという結果に終わりポルシェ・ターボの優位性があらためて証明される結果となっていました。
そして935が勝ち続けたことでグループ5=シルエットフォーミュラのレースも廃れてしまい、1982年にはグループCによる世界耐久選手権(WEC)へと移行していきました。もっとも、そのWECでもポルシェの優位は揺るぎなかったのですが、各メーカーがこれに挑むという図式で、結果的にWECは大きな盛り上がりを見せることになりました。いずれにしてもポルシェのターボ、流石です。