沢山ありすぎる収納とラゲッジ容量は最高の車中泊仕様
また、収納にも優れており、後席脇には収納機能付きのリヤシステムトレイを採用。まるでベッドのサイドテーブルのようにカップホルダーやティッシュボックスがふたつ入る大型ボックス、シークレットボックスなどが備わって、車中泊にピッタリといえるほどの機能性だった。
インパネまわりも7Lの大容量グローブボックスや小物が置けるアシストトレイ付きボックス、大型のドリンクにも対応したドリンクホルダー、カーナビを装着しなければCDなどの収納に便利なセンタービッグボックスができて収納は多彩。いち早くウインドウ全面にUVカットガラスを標準装備したうえに、オプションで後席とリヤハッチにプライバシーガラスをオプション設定していたので、『これで車中泊をしてください』と言わんばかりの装備を採用していた。
そしてラゲッジ空間もルーフから下まで大きく開く構造で、後席を倒さなくても340L(VDA方式)のスペースを確保。近年の同クラスのハッチバックやSUVなどがボディ剛性を確保するために絶妙に開口面積を変えているが、S-MXは十分な開口面積を誇る。こうした細かな面まで配慮されて生み出されたのがS-MXだ。
発売1年後には樹脂部をボディ同色にした「ホワイトストリーム」も登場
このS-MXは発売から一年と経たずにマイナーチェンジを受けて、1997年9月には無塗装樹脂部分がペイントされた「ホワイトストリーム」をローダウン仕様に設定したほか、全車にABSを標準装備とする時代に合わせた改良が行われた。この改良は発売以来1カ月販売平均6000台を超えるヒットを受けてのもので、当時は上級装備のウェルカムランプ機能付きキーレスエントリーも採用。
そして1998年5月にはまたもマイナーチェンジされる。これは18カ月で9万台近くの販売台数の実績から行われたもので、内外装に新色が追加されてローダウン仕様以外でも、樹脂部品をボディ同色にした仕様が設定された。
さらに1999年には本格といってよいマイナーチェンジを受けて、乗車定員を従来の4名から5名に変更。前席をセパレートタイプとして後席に50:50の2分割可倒シートを採用。前後のウォークスルーができるようになって、ローダウン仕様も5人乗りと従来の4人乗りの両方を設定して、利便性を向上させている。
この際にボディ衝突安全性や最高出力10psアップを果たして魅力度を高めたほか、外観上での識別点は丸形ヘッドライトの下部が少しバンパーに食い込む形が特徴的。2代目オデッセイのようなヘッドライトがポイントだ。ローダウン仕様にはフォグランプも設定されて、愛嬌は一段と増した感じの変更を受けている。その後、2000年12月にはグリル形状をはじめとした内外装の変更が加えられたが、S-MXは大ヒットモデルでありながら絶版となる。
デビュー当初の偏ったイメージがなければさらに大ヒットしたかも
S-MXの実力は非常に高かった。この仕様のまま1.5Lエンジンの5人乗りとして、今販売してもヒットモデルとなっていたと思う。しかしあの時代に4人乗りの2L車としてリリースし、コマーシャルもまるで結婚前のカップル専用車みたいな周知をしていなければ……と思ってしまう。自動車雑誌の広告にも並んだ甘い言葉はあまりにもターゲットを絞り込み過ぎだと、当時も今も感じている。
性能がよければ商品は売れるという時代はあったのだと思う。クルマ選びはイメージも非常に重要だ。違うCMや違う名前で販売されていればもっと売れただろうと思う車種はいくつもある。S-MXはクルマにとってもイメージは非常に重要だと思わせてくれる一台だ。
■ホンダS-MX(E-RH1)主要諸元
○全長×全幅×全高:3950mm×1695mm×1750mm
○ホイールベース:2500mm
○トレッド 前/後:1485mm/1485mm
○車両重量:1330kg
○乗車定員:4名
○最小回転半径:5.2m
○最低地上高:160mm
○室内長×室内幅×室内高:1695mm×1480mm×1250mm(サンルーフ付きは1245mm)
○エンジン:B20B型直列4気筒DOHC
○総排気量:1972cc
○最高出力:130ps/5500rpm
○最大トルク:18.7kg-m/4200rpm
○サスペンション 前/後:ストラット/ダブルウィッシュボーン
○ブレーキ 前/後:ディスク/LTドラム
○タイヤサイズ 前後:195/65R15