心遣いが優しいドライバーズファーストなクルマの機能とは
近年はデジタル時代がクルマにも訪れて、運転席からの操作性が激変している。すべてスマホやタブレットのようにタッチパネルとなるのが未来的と人気を集めているが、じつはこれ、すべてがコストダウンのため。エアコンの温度調整やオーディオ操作などは、物理的なスイッチが付いていたほうが使いやすいと思うのだがコストには抗えないらしい。そのうちに「運転席の窓を10cm開けて!」と言えば叶う時代が来るのだろう。
でもボルト&ナットの時代からクルマを運転する筆者からすれば、なんとも扱いにくいことこの上ない。何もチョークやグローが装備された時代まで戻ってほしいとは思わないが、物理的なスイッチがある方が便利な部分もまだまだ多い。何も先進的な機能ではなくても、しっかり運転者に寄り添ってくれるドライバーズファーストなクルマを紹介しながら、クルマの進化とともにドライバーを手助けしてくれる便利な機能を振り返りたい。
BMWでは古くからドライバー側に傾いたインパネを採用
ドライバーズファーストと聞いてまず思い出すのがBMWだ。過去のBMWはセンターコンソールが若干ながら運転席側を向いており、オートではないエアコンとカーナビどころかCDすら珍しかった時代でも非常に使いやすかった。それこそカセットテープの入れ替えやエアコンの温度調整は頻繁ではないものの、運転中に必要な操作であり、手が届きやすいとか目線を動かさずに使えることで便利だった。もちろんテープ交換は信号待ちでやる作業だが、それだって優れた操作性であることに越したことはない。
現在ではメルセデス・ベンツのMBUXなど、最新の音声認識も慣れれば便利な機能であるが、まだまだ万能ではない。市販化されて使われていくなかで進化するのは理解できるのだが、過渡期である現在は物理スイッチとの併用が必要だと思う。とはいえ、スマホ世代の若者にはMBUXのような音声認識操作をすぐに使いこなしてしまうのだろうが……。
ちなみにBMW傘下になったMINIがヒットしたのは、往年のセンターメーターとトグルスイッチが備わる点が魅力だったはずだ。こちらは決して使いやすかったわけではないが、MINIの世界観を表現するには必要であった。オールデジタルではなく一部にアナログ的な機能や仕立ては、クルマの個性を引き立てる意味でも今後も残してほしいものだ。
ワイパーとウインカー操作を1本のレバーで担うメルセデス・ベンツ
続いても輸入車になってしまうが、メルセデス・ベンツのワイパーレバーもそうだ。信じられないかもしれないが、現在のCクラスのご先祖モデルであるW201の190Eや名車として語り継がれているW124などのEクラスのご先祖モデルには、ステアリングコラムから生えているレバーが1本だけでウインカーとワイパーの操作ができた。
またトランスミッションのゲート式のシフトレバーもありがたい機能。レバーに手を置けば今どこのポジションにシフトが入っているのかがわかるため、視線を移動しなくても使いやすく、操作ミスを防止してくれるものであった。他メーカーではジャガーも「Jゲート」を伝統的に採用し、2000年代以降の国産車の多くも軒並みゲート式が採用されるようになった。近年はシフトレバーからボタンやダイヤル式へと移り変わる時代だが、運転中に視線を動かさずとも操作できるゲート式シフトレバーはドライバーに優しい装備だったと言える。
’90年代にすでに採用されていたヘッドアップディスプレイ
続いてヘッドアップディスプレイも重要な装備と言える。日産のS13型シルビアに設定されたことで知名度を上げたこの装備だが、とにかく視線移動が少ない点がありがたい。高速道路を走っているときなど、道路の勾配によって速度は意外と変化しやすく、上り坂で速度が落ちることが原因となり、渋滞の発生につながってしまう。
最新のACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を使っていればそんなことは起こらないが、視線移動が少なく状況を視認できるヘッドアップディスプレイは十分にドライバーズファーストな機能と言える。