E36型BMW M3 Evoを手動ドリフト仕様に改造
スピネラコスさんのドリフトマシンはE36型BMW M3 Evoで、3.2Lエンジンはノーマルの321psのまま。フロントには「D1GP」でおなじみ、ワイズファブ製ナックルキットを組みこんでいて、ファイナルギヤは3.9としている。シーケンシャルトランスミッションの「SMG1」仕様なので、クラッチ操作なしにシフトチェンジが可能だ。左手のレバーでアクセルとブレーキを操作し、右手でステアリングを握るのが基本スタイルとなる。
「このクルマは旧式の技術だから、アクセル、ブレーキ、ハンドブレーキ、クラッチ、すべての機能を個別に操作できます。とはいっても、手だけの運転でドリフトするのはなかなか大変です。レッスンでドリフトの基本的なことを教わってから最初にチャレンジしたときは、毎回スピンしてしまって心が折れそうになりましたが、それでも挑戦することを諦めませんでした」
2018年に国内チャンプ、次はプロカテゴリーに挑戦
プライベーターとしてギリシャ・ドリフト選手権に2016年から参戦し、トレーニングと実戦経験を積み重ねたスピネラコスさん。2018年シーズンでは、ついに、ストリートリーガル部門の国内チャンピオンの栄冠に輝くことができた。
現在は、ギリシャ人の障がい者として初のプロカテゴリー選手を目指し、新たなドリフトカーを作るプロジェクトに取り組んでいる最中。「もしすべてうまくいけば、世界的にもユニークなマシンになるはず」とスピネラコスさんは言う。そちらに専念するため、今シーズンは選手権には参戦しないとのことだ。
「ドリフトはギリシャで、ここ10数年で急成長しているスポーツです。マシンを作り込んで選手権や峠レースで公式にドリフトレースをしている本気組ドライバーは全土で150人くらいいますが、距離の問題もあるので、どのレースも出場者は毎回40~60人ほど。ギリシャではモータースポーツはプロモーションが足りなくてまだマイナーなんです」
公式なレースに参加しないドリフト愛好家を含めれば、ギリシャ全体でドリフトカーは1000台ほどあるとスピネラコスさん。ただ、最近はギリシャ経済の不景気もさることながら、ウクライナ情勢の悪化にともなってガソリンやあらゆる物資が高騰しているため、ガレージで眠ったままになっているマシンが多いという。モータースポーツも健全な経済活動あってこそ。まずは一刻も早い平和の実現を祈りたい。