高嶺の花のようでいて中古になると格安な輸入車の現実
20代のころ、EG型シビックSiRやS15型シルビアなどの国産スポーティカーを乗り継いだあと、愛車にしたのは初代NEWミニだった。当時は輸入車専門誌に配属されたばかりで、輸入車の“ゆ”の字も知らなかったのだが、上司のゴリ押しもあって購入させられたと言うのが事実で、それまでは『ケッ、輸入車なんてお高く止まって嫌なヤツ』程度の認識だった。
初めての輸入車としてNEWミニを買ったら楽しすぎた
ところがこのNEWミニを所有してみると嘘のような幸せが待っていた。シルビアに乗っていたからといって後輪駆動に特別なこだわりがあったわけでもなく、逆にあのゴーカートフィーリングとキビキビ走る小気味良さは、街なかを流しているだけでも至福の時間であった。両手で収まる程度の愛車遍歴で恐縮だが、このNEWミニが過去イチのクルマであることは今後、新にクルマを購入しても不変かもしれない。
また、2000年代中ごろまでは国産車と輸入車の装備にはまだまだ格差があって、いまでは国産車でも当たり前のサイドエバッグやカーテンエアバッグなどは輸入車の専売特許だった。横滑り防止装置のESPや、航続可能距離を表示するオンボードコンピュータなどの装備にも驚かされた。
もちろん、現在では国産車も輸入車と同等や場合によってはそれ以上の性能を誇るクルマがいくつも存在。国産車が飛躍的に性能を向上させていく過渡期に初めて輸入車と出会ったこともあり、輸入車のクルマづくりにおける基本的な思想や設計、安全性にとにかく驚かされた。
中古国産ミニバンを検討するも初代ゴルフトゥーランを購入
前置きが長くなったがここからが本題。NEWミニのあとに初代BMW1シリーズを所有したのだが、マイホームの購入をきっかけに売却し、一時的にクルマを持たない生活をしていた。同時に子どもがひとり、ふたりと増えたことでやっぱりマイカーがあると何かと便利であることに気付き、そこで購入したのがVWの初代ゴルフトゥーランだった。
当初は中古の国産ミニバンを探していたが、ノア&ヴォクシーやステップワゴン、セレナはありきたりで面白くない。そこで人気国産ミニバンとは良い意味で差別化されていたマツダ・ビアンテに惹かれるも、最終的な決定打がない。そこで何とか家族を説得というか、国産ミニバンから目をそらせるように洗脳して、購入したのが、初代ゴルフトゥーランだった。
購入当時(2017年)、すでに10年超経年した個体であったため、ACCはもちろんアイドリングストップやスマートキーも付いてないアナログなクルマであった。だが、ゴルフ5ベースながらホイールベースと全長が拡大されたことで、広々とした室内空間と3列目シートを前方に畳むことでフラットな荷室ができ、キャンプ道具などを積むのにも便利なユーティリティ性を誇った。また、このモデルは欧州の衝突安全テスト「ユーロNCAP」で5つ星を獲得しており、発売当時は最高レベルの安全性能も備わっていた。
中古輸入車のメリットはとにかく車両価格が安いこと
購入したゴルフトゥーランは10年超の輸入車ということで、前オーナーが残した爪痕(キズ)を消すための板金塗装代やすり減ったタイヤをグッドイヤー製の新品に交換するなどの出費こそあったものの、乗り出し価格はなんとコミコミ40万円。クルマを手配したカーショップを営む義弟がオークション落札した価格はなんと10万円! 経年した輸入車の値落ちが顕著であることは知っていたが、まさかそこまでか? と驚愕するとともに、端から新車は買えない事情を考えると『貧乏輸入車ライフ』は捨てたもんじゃないな〜と開眼した次第。
もちろん10年落ち7万kmの経年車なので新車のようなシャッキリ感は少し薄れているものの、それでもバタンとドアを閉めた手応えは欧州車そのもの。本国では大衆車のVWだが、あらためてドイツ車のボディ剛性の秀逸さに驚かされた。
懸念材料は国産車に比べて故障リスクが高いこと
懸念点があるとすれば悩みの種になりがちな国産車に比べて故障のリスクが高いこと。ホントは中期・後期型のDSG(デュアルックラッチ式トランスミッション)とTSI(直噴ツインチャージャーエンジン)が採用されたモデルがベターだったが、ご存じの方もいるかと思うがDSGの信頼性の低さは、当たりを引くかハズレを引くかのギャンブルに近いものがあった。
そこで義弟のアドバイスもあり、比較的トラブルの少ないアイシン製6速トルコンATを搭載する初期型を選び、さらに2.0LのGLiと1.6LのEとではトラブルの発生率が低いEの方が良いとのことでそちらを選択した。購入から5年、子どもたちの習い事の送り迎えや年に数回のキャンプ、そして旅行の足として使い倒し、1年1万kmのペースで走行距離を伸ばしている。その結果、現在では12万kmオーバーの過走行車となってしまった。
それでも大きなトラブルはひとつもなく、車検に出した際に指摘された裂けたドライブシャフトブーツと歪んだスタビリンク、 摩耗したブレーキディスクとパッドを交換したぐらいで大きな出費はほとんどなし。
貧乏輸入車ライフはお値段以上の幸せが享受できる
ただし今年に入って、信号が赤に変わりアクセルと抜いて減速していると「ゴンッ」という感じで2速にシフトダウンしたときのフィーリングがかなり怪しくなってきた。歴代ゴルフトゥーランのなかで一番愛嬌がある初代の初期モデルに愛着はあるが、1.6L NAエンジンの燃費の悪さもあってもう少し新しいクルマへの乗り替えを検討中。もちろん格安が必須条件で、狙うのは2010年以降の中期から後期の初代ゴルフトゥーランとなるのだが、前述の通りDSG問題が気になる。
やっぱり安心を買って国産ミニバンか? という思いもあるが、基本設計の良さと年式が古くても充実の安全装備、さらにご近所とかぶらない車種を選びたいと考えると、コミコミ50万円で狙える中古輸入ミニバンを探してしまう。次の車検まで8カ月、クルマが先に壊れるか無事車検まで辿り着くかはクルマ次第だが、好き勝手に妄想しながら格安輸入車を探している『貧乏輸入車ライフ』はまだまだ続きそうだ。
3人いる子どもたちが大きくなればミニバンの必要性もなくなるので、そうなったらまさに『貧乏輸入車ライフ』の本領発揮。すでに妄想中だが、最初に輸入車ライフを楽しませてくれた初代NEWミニの6速MT車やゴルフ3のGTI、初期モデルのアバルトのほか、AT車であればVWパサートヴァリアント(※DSGのリスクはあるが)や、いまでも色褪せないインテリアのアルファ156なども所有してみたい。もちろん、いずれも国産車と比べると故障のリスクの高さは玉に瑕だが、壊れないまたはメンテナンスが必須となるものの、どうやらこの沼からは当分抜けられないのかもしれない。