加速も回生による減速もジェントルに抑えている
ドライブモードは、bZ4Xのエコとノーマルに対して、 ソルテラがエコ、ノーマル、パワーの3つを選べる。けれども、bZ4Xの試乗記でも触れたように、その制御はbZ4Xのエコがソルテラのノーマルに、同様にノーマルがパワーに近いという話をスバルの開発者からは伺っている。
そのパワーモードにしても、続々登場してきているEVに少なくない、背中を蹴らるような一瞬の強烈な加速度をもたらすようなものではなく、雪のなかでもパワーモードで乗れるじゃない、というくらいの紳士的な特性になっている。加速を求めた際に、十分に速いけど暴力的ではないレベル。ここは、スバルだけの意図というわけではないだろうが、それこそbZ4Xとソルテラの狙いが知れる。
さらに、「Sペダル」と呼ぶ回生を利用したいわゆるワンペダルモードは、低速域でアクセルペダルを全閉にした際でも最大マイナス0.15Gまでに抑えられている。さらに言えば、完全停止まではしない。減速度を抑えているのは、ひとつはアイスバーンのような低ミューでの意図しない車輪ロックを避けるため。完全停止としていないのは、ドライバーに車両を止めるという行為を意識して操作してもらうため、とのこと。各社に考え方があり、どれが正しいのかは難しいところではあるが、スバルのこの考え方は、どちらも理に適っている。
bZ4Xには備わらないパドルシフト使用時は、Sペダルは作用しない代わり、回生による減速度(これも最大マイナス0.15G)をコースティングも含めて4段階から選べる。エンジンブレーキ的に軽い減速を求めたいとき、段階的に減速度選べるのは便利だし、意思を込めた操作感を得られるのも好ましい。
シビアな路面状況ではX-MODEが心強い
最後に、スバルのX-MODE(bZ4Xにも備わる)は、イザというときにありがたい装備である。しかも、フォレスターなどエンジン車では、アクセルコントロールに気を使いながら、飛び出しに気をつけたりするものだが、BEVのソルテラでは、駆動輪の空転時間がごく短いままに脱出できる。さらに、グリップコントロールと呼ぶ、極低速を一定に維持するシステムを加えたことで、シビアな路面状況のなかでもステアリングの操作に集中できるのがいい。
GR86とBRZでは、トヨタが開発の最後の最後でスバルとは違う走り味を求めることになったが、ソルテラにはBEVでもスバルらしさをしっかりと走りにも盛り込みたい、という意思が強く現れていた。ならばこそ、ソルテラは思いきってAWD版だけでもよかったのではないか。試乗を終えた今、そうも思えてきている。