クルマの中はガソリンタンクを抱えた密室!
先日、ニュースの記事でキャンプでの車両火災事故が報道され、盛り上がる車中泊ブームの陰に潜む危険を再認識させられました。また、キャンプ道具から漏れ出した燃料が原因の車両火災なども発生しており、ひとつ間違えば大きな事故につながる危険性があるのです。ここでは車中泊での火災の危険性とともに、防火対策について考えてみたいと思います。
※写真はすべてイメージです。
車中泊とキャンプは違うものだと認識を
車中泊とキャンプはアウトドアの延長線上にあることは間違いありませんが、じつは似て非なるモノ。テント泊を主とするキャンプは野外での調理や焚火を楽しむものであり、車中泊は行動の多くがクルマという閉鎖された狭い空間で行うことになります。車中泊で使用する調理器具や暖房器具などは、薪や炭、ガソリン、アルコール、ガスなどの燃料を使用するギアを使うことができず、または使用することが大きなリスクを伴うことになるのです。
もちろん、車内で薪や炭を燃やす人はいないと思いますが、利便性の高いホワイトガソリンやアルコール、ガスを使用するバーナーやコンロを車内で使用することも危険な行為であり、車両火災の原因になる可能性を秘めています。
車内での火器の使用はリスクだらけ
最近の住宅には難燃性、防火性、耐火性などの建築素材などが使用され、火事のリスクを最小限に抑えるようになっていますが、車中泊で使用するクルマは車内での火器の使用を前提に設計・生産はされてはいません。それだけに、車中泊でのアクシデントに対しての防火性は脆弱で、万が一のトラブルでは大きな事故につながってしまうことを覚えておきましょう。
車内では燃焼系の器具は使用せず、使用する場合には車両の外で作業をするように心掛けてください。狭い車内で火器を使用することは車両火災の原因となり、異常燃焼や燃料漏れによってウェアやシュラフ、内装などに炎が燃え移ってしまうことが考えられるからです。また、閉め切った車内で火器を使用すると一酸化炭素中毒や酸素欠乏などのリスクも発生します。車中泊は快適で安全なイメージがありますが、何十リットルも燃料が入ったガソリンタンクの真上で過ごしているという現実をつねに頭に入れておきましょう。
消火器と一酸化炭素チェッカーは必須
とは言うものの、車中泊でコンロや調理器具を使用する人も多いと思います。その場合は「自己責任」が大前提となり、火災を起こさない慎重な取り扱いを心掛けてください。器具が転倒しないようにしっかりとしたテーブルをベースに使用すること、燃料漏れや異常燃焼が起きないように器具を維持・管理しておくこと、燃料の補充や交換はしっかりと火を消してから車外で行うこと、使用中は器具から絶対に目を離さないこと。
リスクを避け、被害を最小限に抑えるためにも車中泊では消火器を用意し、一酸化炭素中毒を防止するための警報機を取り付けておくことをおすすめします。一酸化炭素チェッカーはキャンプ(テント内)用としても市販されており、1000円前後で手に入れることができるので事前に用意しておきましょう。車内で火器を使用する場合にはしっかりと換気を行い、窓やドアを閉め切った状態では絶対に使用しないよう注意して下さい。
電気を使ったアイテムで安全・快適に
これまで述べたように車中泊にとってリスクの高い燃焼系の器具ですが、冒頭にも述べたようにキャンプと車中泊は似て非なるものであり、揃えるべき道具の性質が異なります。車中泊では火災や一酸化炭素中毒の危険性の低いLEDランタンや照明器具、電気ケトル、IHクッカーなどが注目を集め、電気を使う道具を使用するために「ポータブル電源」が大きなトレンドとなり急速に普及しています。電気を使うことで火災や一酸化炭素中毒のリスクを抑えることができ、大容量なポータブル電源は電子レンジやオーブントースター、冷蔵庫、電気毛布なども使用できるのです。火器を使うことなく快適さを提供してくれるポータブル電源は、車中泊にとって大きな味方になることは間違いありません。
PSEマークの付いたポータブル電源を使う
しかし、電気を使った快適な車中泊でも注意するべき点は存在します。少し前にニュースで報じられたことを覚えている人も多いと思いますが、粗悪なモバイルバッテリーが発火するという事故が多発し、車中泊でも同様のリスクがあるということです。スマホや電熱ベストなどに使用するモバイルバッテリーを手に入れる場合には、過充電や加熱したときに給電速度を制御する安全装置が付いている商品を選んでください。安全性を満たしている商品には「PSEマーク」が着いているので、購入する際の目安になると思います。
しっかり安全対策をして楽しい車中泊を
車両火災や一酸化炭素中毒など、万が一の事故が起きてしまえば命を落としてしまう可能性も決して低いものではありません。車中泊はあくまでも趣味であり「安全」を最優先することが大切です。快適な車中泊を楽しむためにも安全対策をしっかりと施し、リスクを最小限に抑えることを心掛けてください。