古典的なシャシーにフェラーリ内製の流麗なボディを架装
ということで、そろそろ250GTOそのものについて紹介していきましょう。シャーシ(ボディ)に関してはフレーム付きとしている資料もありますが、鋼管スペースフレームとモノコックとのハイブリッドというべきでしょうか。鋼管フレームとアルミパネルを成型してできあがった外皮パネルを組み合わせています。
これに組付けられたサスペンションはフロントがコイルで吊ったダブルウィッシュボーンの独立懸架で、リヤはリジッドアクスルをラジアスアームで位置決めしてリーフスプリングで吊ったタイプでした。意外にもプリミティブなスペックとなっています。やはりクルマは単にスペックでパフォーマンスが決まるって訳じゃないのでしょう。
搭載されたエンジンは250ユニットと呼ばれる3Lの60度V型12気筒。シングルカムのOHCで、最高出力も280psに過ぎませんでした。もちろんレースに出るとなればさらにチューニングが施されることになるのでしょうし、車両重量がわずか950kgに抑えられていたために、ベースモデル(ロードゴーイング)としてはそれで充分だったのでしょう。
そんなV12が収まるロングノーズから流麗なラインでテールに流れるシルエットは、フェラーリの社内デザインだと伝えられています。一連のフェラーリを手掛けてきたピニンファリーナの作品と言っても通用する出来栄えです。この時代には珍しく空力にも充分心が配られ、当時フェラーリのドライバーだったリッチー・ギンサーが提案したと言われるリベット止めしたリヤスポイラーと、フロントノーズの先端に3つ並んだエアインテークがスタイリング上での大きなポイントとなっています。
最後に250GTOというネーミングについても紹介しておきましょう。当時のフェラーリのネーミングの法則通りで、250は1気筒当たりの大体の排気量で、これに12(気筒)を掛けて3L(正確には73.0mmφ×58.8mmの12気筒で2953cc)となるわけです。
GTOはGran Turismo Omologato(GTカーとして公認された、の意)の頭文字を繋げたもので、のちにグループBの公認を取得した288GTO(フェラーリ的には単にGTOが正式名称ですが、250GTOと区別するためにこう呼ばれています)や、こちらは公認には関係ないもののフェラーリ史上最速のロードカーとされている599GTOなどがよく知られています。
さらに他メーカーでもポンティアックGTOや三菱のギャランGTOなどがありますが、こちらも車両公認とは関係なく、フェラーリの250GTOに倣ったものでしょう。
4Lエンジンを搭載したモデル3台を含めても総生産台数は39台と極めて少なく、またレースにおける活躍などその経歴も見事なため、オークションでは最初に触れたような高額で落札されるのでしょうか。マラネロにあるフェラーリの博物館にも何度か訪れましたが、ワイヤリングでクルマのシルエットを描いた展示モデル(オブジェ?)を」見かけただけで、250GTOの実車には、残念ながらこれまでに一度もお目にかかっていません。
フェラーリ本社にも収蔵されていないのか、それとも門外不出の1台となっているのでしょうか?