旧車でサーキット走行を楽しめる環境が整備されている
販売面の好調さが追い風となり、旧車のレースが活況だ。オーナーがコンスタントに増えていることもあり、遊びの場もたくさん用意されているからである。 なぜ活況なのかを考えることは旧車の魅力に対して思いを巡らせることでもあるので、1998年に購入したアルファロメオGT1600ジュニアを今でも愛用している筆者の私見を記しておこう。
クルマを操る感覚が楽しい
最新のクルマはハイテクで、アブナイ場面で電子制御が素早く介入してくれる。だが、旧車にはアシストが一切ないため、操作がダイレクトで、よりクルマを“操っている感”が大きく、乗っていて楽しくなる。家の周りをグルッとひと回りしてきただけでも「往年のスポーツカーを運転しているぜ」とニヤニヤしながら思えるほどだ。
そのような感じなので、旧車でサーキット走行をすると、冷や汗の場合もあるが、いい汗をかくことができる。スポーツをした後と同じ爽快感を味わうことができるのだ。もちろん、現行車でサーキットを走ったほうが安全だ。もはや荷重移動を気にする必要すらないほど電子制御が介入してくる昨今のクルマはスゴイ性能を運転席で体感することができる。とはいえ、個人的な意見だが、旧車でコースインしたほうがスリリングでオモシロイ。
メンテナンスが行き届いていればサーキット走行をしてもクルマへの負担が少ない
旧車でサーキットを走ると壊れるのでは? 莫大なコストがかかるのでは? と思うかもしれない。結論から話すと、経験豊富なスペシャルショップに車両の製作とサポートを頼めば、そんなことはない。各部を一度ちゃんと仕上げてもらえば、自走でサーキットまで行ってレースを楽しむことができる。
もちろん、サーキットに到着したら、オイル漏れや各部の緩みがないか、タイヤの空気圧は大丈夫かなど最低限の確認は怠らないようにしたい。また、クルマのコンディションを維持するためにも、
タイヤの消耗を気にする方もいるだろうが、草レーサーの強い味方として注目されているブランドの新品ハイグリップタイヤが1本:6600円で販売されている。この価格なら、すり減ったら交換すればいいという割り切った考え方もできる。
ベテランドライバーも楽しめるレース形式のイベントもある
また、旧車ビギナーも楽しめるサーキットイベントがあるので、その情報も記しておく。年間4戦のシリーズ戦として開催されている「東京ベイサイド・クラシック・カップ・シリーズ(TBCC)」が、敷居の低いサーキットイベントとして毎回数多くの参加者を集めているのだ。
往年の輸入車と懐かしい国産車が参加しているレース形式走行会で、袖ヶ浦フォレストレースウェイを本気で走るサーキットイベントながら、ドライバーの腕とクルマの性能によるラップタイムによりクラス分けが行われているため、安全にバトルを楽しめるよう配慮されている。思い思いのスタンスとスピードでレースを堪能できるので、70代のベテランドライバーもたくさん参加している。
クラス分けについて具体的に説明すると、初心者向けのクラブマンズ・カップは袖ヶ浦フォレストレースウェイでのベストラップタイムが1分30秒を超える程度、その上位クラスとなるクリスタル・カップは同1分25~29秒台程度。さらに、その上位クラスとなるスーパークリスタル・カップは同1分22~25秒台程度の車両/ドライバーが参加できる。そして、過去に1分22秒よりも速いタイムを記録している車両/ドライバーは、最上位クラスのハイパークリスタル・カップ・クラスで走ることになる。
また、TBCCに参加する前にお試しでサーキットを走ることができる“プレTBCC”的な意味合いを持つスポーツ走行クラスなども用意されており、このカテゴリーも人気だ。TBCCならではのカテゴリーといえる、このスポーツ走行クラスは現行車も走行OKだ。
TBCCは敷居の低いモータースポーツであるからこそ、ルール、マナー違反に対するペナルティを明確化し、レース時の安全性を高めている。そうすることで、良い雰囲気でバトルを楽しめるようにしているのだ。そして、年間ポイント制を採用するなどし、TBCCらしさを保つ配慮もなされているのが特徴だ。
ちなみにTBCCのほかにも、サイドウェイ・トロフィー、アバルトカップ、御岳サリータヒルクライム、チャオイタなど、旧車で楽しめるモータースポーツが多く展開されている。愛車の特性が合うイベントにエントリーしてみてはいかがだろうか。
実際にTBCCに参加している方の声
人生初の旧車として1975年式のアルフェッタGTを購入したKさんは、ごく普通のサラリーマン・オーナーだ。セッティング不足でクルマが想定した動きにならなかったりするところが旧車レースのオモシロイ点とのことで、同じクルマに乗るライバルと情報交換しながら楽しく戦っている。
年齢が70代半ばというベテランドライバーのKさんは、1982年式のフィアット X1/9でレースに参戦している。以前は、グリルなどがGTA仕様にモディファイされ、2000ccエンジンを積んだアルファロメオGT1300ジュニアでサーキットレースを楽しんでいた。
自分のスキルや収入の変化に応じて参戦車両や参戦クラスを変えられる点が旧車レースの魅力とのことで、これからも個性的なクルマを駆り、アグレッシブな走りを披露していきたいそうだ。
いま所有している旧車オーナーでも参加しやすい
旧車をリフレッシュするのに必要なさまざまなパーツをインターネットを駆使して海外から簡単にゲットできるようになったため、フィアット X1/9オーナーのKさんはトータルで10~20万円ぶんの部品を一気に購入したとのこと。
ちなみに、X1/9は2018年8月に180万円でゲット。これまでにかかった維持費としては、フロアが錆びて穴が開いていたので、フロアパネルを9万円で買って接着。マフラーは触媒付きでワンオフ製作し、こちらは10数万円の出費になったらしい。
Kさんによると、メカニックを生業としている友人に“お友だち工賃”で修理および整備してもらっていることもあり、車検時の出費は自賠責保険と諸費用の7万円ぐらいで済んだのだという。サーキットに通うと自動車趣味仲間から有意義な情報をゲットできるので、ビギナーはもちろん、ベテランドライバーにも有意義なのだ。
週末に、ゴルフやサーフィン、釣りや登山に行くのと同じような感覚で、旧車でのサーキット走行を楽しめる環境が整備されているので、気軽に楽しんでみてほしい。