アウトドア車としても人気絶頂のホンダNシリーズ
今、アウトドアや車中泊で注目されているクルマが軽自動車だ。「軽キャン」と呼ばれるキャンピングカーが人気なのからも分かるように、軽バンやスーパーハイト系軽自動車の室内空間は驚くほど広く、天井が高く、またシートアレンジ性にも優れ、車内をベッド化するにも向いているからだ。そこで、人気軽自動車のホンダ「N-BOX」と、Nシリーズの1台、軽バンの「N-VAN」の車中泊性能を比較してみたい。
空間効率と広さなら断然N-VAN
まずはN-VANである。Nシリーズの1台として加わった4ナンバーの軽バンであり、ベースは現行N-BOXのFF車。ホンダ独創のセンタータンクレイアウト、軽バンの世界では革新的と言える助手席側センターピラーレス構造のボディ、後席に加え、助手席までダイブダウン格納できるフルフラットフロアなど、車中泊カーとしても見るべき点は数多い。
本来、荷物を運ぶために生まれたNシリーズだけに、荷物の積載性、前席背後の空間効率は抜群で、大開口スライドドア、バックドアのどちらからもアクセスできる広大な室内空間(荷室空間)は、ほぼ完全にフラット化できるとともに、助手席までフラットに格納でき、その際の最大フロア長は2635mmに達する。当然、荷物を運ぶためだけでなく、一般ユーザーの使用も想定され、ホンダの純正アクセサリー部門のホンダアクセスから車中泊用のアクセサリーが豊富に用意されているのも注目ポイントだ。
一方、スーパーハイト系軽自動車の代表格のN-BOXは、もちろん車中泊に特化したクルマではない。だが、後席を格納しただけだとベッド長は1470mmでしかないものの、ヘッドレストを逆付けして枕として利用すれば、枕分を含めて全長約1600mmのベッドに仕立てられるのだ。小柄な大人や子どもにとって、十分な車中泊スペースが出現することになる。
乗り心地を考えるとN-VANはおひとりさま向け
と、上記の点だけを見れば、N-VANのほうが車中泊に適していると思えて当然だが、そもそも車中泊はどこでするか、何人でするか……と考えると、答えは変わってくるかもしれない。つまり、自宅から遠いところまで走っていくとすれば、動力性能や乗り心地、車内の静かさ、そして何と言ってもシートのかけ心地の良さでは、乗用車のN-BOXが俄然有利になる。N-VANのシートは、助手席・後席ともに完全に簡易シートであり、運転席だって仕事用でタフネスさ優先の、長距離走行を想定していないはずの作りなのである。
しかも、N-VANの最大ベッド長2635mmは、あくまで助手席を倒した際の寸法であり、運転席はアレンジできない。よって、おひとりさま用の車中泊カー、または運転席側の最大荷室長が1585mmだから、長身の大人+身長158cm以下の人とふたりの車中泊に限定される。しかも、動力性能や乗り心地は長距離ドライブ向きではないし、助手席に座って長距離ドライブはシートのかけ心地を考えると厳しく、やはりおひとりさま車中泊、近所の移動向きと言っていいのである。