昭和のカスタム用語03:ダンドラ、ペリ、サイドポート加工
トヨタの直列4気筒DOHCエンジンである2T-Gや18R-G、日産の直列6気筒SOHCのL型エンジンが話の中心でしたが、その双璧というべきライバルがマツダの10A、12A、13Bロータリーエンジン。三角形のローターを回転させるという独自のスタイルを貫いてきたマツダを代表するパワーユニットは、一般的なレシプロエンジンとは異なる独自のチューニングが施されていました。キャブレターの交換も直列エンジンとは違い、独自の形状を持つインテークマニホールが必要となり、装着するとキャブレターが上を向くダンドラ(ダウンドラフト)が個性的な雰囲気を醸し出したのです。
エンジンのチューニングでは、一般的なエンジンのようにピストンとコンロッドを使って縦方向に運動を行うのではなく、ローターの偏心による回転運動で圧縮を行うロータリーエンジンにはサイドポート加工やペリ加工(ペリフェラルポート加工)を施すことでパワーアップが図られました。サイドポート加工はその名の通りサイドハウジングにポートを設けるチューニング手法で、低中速域のパワーを出すことができ、ペリ加工はローターのハウジングに吸気ポートを追加することで効率上げて、高回転域でパワーを発揮させるというもの。
しかし、ペリ加工は高回転域を常用するレーシングエンジン向けに開発されたもので、ペリ加工を施してスタートでエンストする人も多発したという都市伝説も残っています。また、ロータリーエンジンにポート加工を施すと独特のエンジン音へと変わり、アイドリングでは「べッ、べッ、ベッ」、加速していくと「ブベエェェェーーー」と甲高い音が響き渡り、遠くからでもチューニングを施したロータリーエンジン車が走って来るのが分かりました。
【まとめ】遠い記憶が蘇る昭和のチューニング
この記事を読んで「まったく理解できない」という世代の方も多いと思います。現在のようにモノが溢れ、何をするにも手軽に情報が入る時代とは異なり、雑誌や口コミの情報を基にトライ&エラーが当たり前だった昭和50年代。当時の若者は還暦を迎え、当時の記憶さえ薄れ始めている今日このごろ。時代を懐かしむオッサンの戯言として、軽い気持ちで読み流してもらえると嬉しい限りでございます。
電子制御やコンピュータでの解析技術などは存在せず、某エアロメーカーの御大は雨の日にサーキットを走るクルマを見て、跳ね上がる水しぶきで空力を試行錯誤したといいます。アナログな時代ではあったものの、そこにはクルマに情熱を注ぐ「楽しさ」と「苦しさ」が混在し、パワーを出すための技術と知恵が磨かれたことは間違いありません。