後席の降車のしやすさはシート位置がポイント
だが突き詰めていくと、足腰の弱った高齢者ならずとも、後席の降車のしやすさに関わる意外なポイントがある。それがシート位置。これができるだけ外側にあってくれると、降車が楽になる。ミニバンの話ではないが、新型アウトランダーはSUVならではの高い着座位置ゆえに、先代に対して前後シートを外側配置として、乗降性を高めていたりする。
そしてさらなる意外なポイントが、シート外側サイドのたわみである。そこがたわみやすいと、お尻を横に滑らすことで、スルリと体が外側下に移動でき、地面に自然に足がつきやすくなるわけだ。その点では、Mクラスボックス型ミニバンの場合、セレナと新型ノア&ヴォクシーが比較的優れている(シートサイドのたわみ量が大きめ)。
一方、シート座面のたわみは少ないほうが、とくに足腰の弱った高齢者にはありがたい。たわみすぎるとお尻がより大きく沈むことになり、例のヒール段差を着座したお尻の位置で計ると、結果的に低まってしまい、座るのはいいとしても立ち上がり性には不利に働いてしまうのである。
よって、ソファ的なかけ心地より座面表皮の張りが強めの、お尻の沈み込み量が少ないシートがより適切と言えそうだ。この点については、グレード(シート表皮の素材、織り方)にもよるので、各車、実際にたわみ量をディーラーなどでチェックしてほしい。
例えば、コンパクトミニバンの2列目席で言えば、ふんわりソファ的なかけ心地のシエンタよりフリードのほうが、2列目席の座面の張りは強め。もちろん、かけ心地がより良く感じられホールド性で勝るのは、フランス車のような座面がある程度たわみ、お尻が沈み込むシートのほうなのだが……。
もっとも、ここで示したスペックだけで、それぞれの高齢者に最適とは言えないこともある。体型、身長、足腰の弱り具合などによるからだ。できればショールームに連れ出せれば連れ出し、それが無理なら試乗車を自宅に持ってきてもらい、実際に乗り降りしてもらうのが正解だろう。
ここではおもに足腰の弱った高齢者の乗り降りに相応しいシートについて言及した。ステップ、フロアの高さ、スライドドア開口部の高さ、幅、そしてアシストグリップの位置、前席のつかまり所など、乗降性の良し悪しはさまざまな要件が絡むからである。