水平対向4気筒から6気筒、8気筒と幅広いラインアップ
それではポルシェ914と914/6、914 2.0のハードウェアについて紹介していきましょう。エンジンは先に触れたように、フォルクスワーゲン製のプッシュロッド水平対向4気筒(フラット4)でした。
これはフォルクスワーゲン・タイプ4(市販時のモデル名はVW412E)に搭載されていた電子制御の燃料噴射システムが組み込まれたW型の1679ccユニットで、最高出力もVW412Eと同じく80psを絞り出していました。
ちなみに同時に発売された914/6はポルシェ製SOHC水平対向6気筒(フラット6)の、901/36型の1991ccユニットで、最高出力は110ps。また1972年に914/6に切り替わる形で登場した914 2.0は、フォルクスワーゲン製プッシュロッド・フラット4のGB型1971ccユニットで、最高出力は100psでした。
そのほかにもフェリー・ポルシェの60歳の誕生日にプレゼントされた、914-8と呼ばれる特別モデル(2台のみ製造)には、何とレーシングプロトタイプの908に搭載されていたツインカム(4カムシャフト)水平対向8気筒(フラット8)の2997ccユニットが搭載されていました。さすがにロードゴーイング用に再チューンされていて、レース仕様350psから300psにパワーダウンしていましたが、1150kgと軽量なボディには充分だったようです。
ボディは基本的に1種類で、ルーフトップが外せる、タルガトップ仕様2ドアクーペのモノグレード。モノコックフレームのキャビン後方に、フラット4/6/8のエンジンが搭載されていました。
そしてサスペンションは、フロントが911から転用したトーションバーと組み合わせたストラット式。リヤはフォルクスワーゲン・タイプ4用のトレーリングアーム式で、ポルシェの量販車としては初めてトーションバーではなくコイルスプリングを使用していました。
ブレーキは4輪ディスクで、914/6ではパワーアップに対応してサスペンションとブレーキが強化され、ホイールハブも911用が採用。そのためにオリジナルの914ではホイールが4穴でしたが、914/6では5穴となっていました。
これは両車を識別するポイントともなっています。フロントのボンネット下とリヤのエンジン後方にはトランクスペースが確保され、エンジンリッドの下には、外したルーフが格納できるようになっていて、気軽にオープンエアーを楽しむことができるようになっていました。
しかし、純粋な2シーターということで、メインマーケットと考えられていた北米では苦戦。それが大きな理由となり、1969年のデビューから1976年まで、8年の短いモデルライフの末、924にバトンタッチしています。
苦戦の理由には、スタイル(エクステリアデザイン)が芳しくなかったとの声も聞かれましたが、デザインの好みは十人十色。やはり純然たる2シーターで、コートなどの手回り品を置くスペースもなかったことの方が大きな理由だったのではないでしょうか。デザインの好き嫌いはともかく、個人的にはそう判断しているところです。