クルマの高性能素材といえばカーボンとチタン
高性能な金属と言えば「チタン」である。元素記号は「Ti」。なんといっても、軽くて強くて鈍く光ってカッコいい(笑)。そんなチタンだが実際のところ、何が良くて、クルマのどんなところに使われているのだろうか。
チタンの最大の特徴はズバリ「強度」
レースカーやチューニングカーで高性能な素材と言えば、チタンとカーボンである。今回フォーカスするのはチタン。
軽くて強くて高くて、価格以外は理想的なのがチタン。壊れにくさを示す強度は鉄の約2倍、アルミの約3倍もあり、強いのが特徴だ。同じ大きさだとじつはアルミの方が軽く、アルミの約1.7倍の重さになる。しかし強度が圧倒的に高いので、同じ強度を持たせるようとした場合、はるかに肉厚を薄くできるため圧倒的に軽くなるのだ。
その特性を利用して、チタン製の中華鍋は女性でも軽々と扱えると人気があったり、ゴルフクラブでもチタンは定番の素材なのである。世の中にはチタン製の大鳥居を建てた神社もあったりする。
「剛性」は低く、最も活躍するのはマフラー
しかし、壊れにくさを示す強度は高いが、じつは剛性は低い。剛性とは、力が掛かったときにどれくらい歪んだり、変形するかのこと。つまり壊れにくいが、力が掛かると変形はしやすい。なので、サスペンションアームやサブフレームなど、大きな力が掛かる箇所には採用されない。しかし、同程度の強度を持たせるとスチール製やアルミ製よりも、はるかに薄い厚みで作れるので結果として軽くなる。
そして、なんと言ってもチタンの恩恵が大きいのはマフラーだ。排気パイプはそれほど力は掛からないので、パイプ厚を極力薄くできる。それでいてチタンは腐食に強いので錆の心配がなく、降雪地域でも塩化カルシウムによる腐食も起きにくい。
たとえばHKS製「スーパーターボマフラー」でWRX STI(VAB)用の場合、ステンレス製は26.1kg、チタン製は13.4kgと約半分の重量に抑えることができる。だからこそ、いつの時代もチタンマフラーは羨望の的なのだ。
お値段だけネックだが満足度は高い
チタンのデメリットは価格くらいだろうか。ちなみに先程のWRX STI用マフラーはステンレスが23万4300円に対して、チタン製は62万8100円。重量は半分、価格は約2.7倍なのだ。しかし、それだけの意味と効果があるのがチタンだ。また、性能には直接関係ないが、鈍く光るパイプは、なんとも言えない雰囲気を持つ。熱の掛かる部分は自然に焼け色がついていくのも美しく、またマフラーが育っていくのは見ていても楽しいものである。ちなみに、テールエンドのチタン焼け色は、化学処理による加工で虹色にしている場合と、実際に焼いている場合がある。
ほかにマイナスポイントはめったにないが、パイプやステーの修理が必要になったとき、チタンは溶接が難しく専門の工場でないと修理できないことがある。デメリットといえばそれくらい。だからこそ、チタンは愛されるのだ。
チタン製シフトノブは軽すぎてフィールには好みが分かれる
ほかにも、インテークのパイプも見た目と軽量化を訴求してチタン製がラインアップされている。ホイールナットでは、その硬さからインパクトレンチの仕様によるダメージを受けにくく、それでいて軽量とあって、タイムアタック派からは愛されている。
ホンダのシビックやインテグラに設定されたタイプRでは、チタン製シフトノブが話題に。独特の質感でファンも多かった。アフター品でもチタン製シフトノブがあるが、あまりの軽さにギヤの入り具合がだいぶ変わる。シフトノブはある程度重さがあった方が吸い込まれるように次のギヤに入っていく感触になりやすく、チタンほど軽いと違和感を思えるかもしれない。